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出し縫いについて考える

2010.05.10|靴の話

 尊敬する人物は海原雄山、たなかです。

 今日は靴、特にメンズシューズで重要な「出し縫い」についてつぶやいてみようと思います。

 出し縫い
   ⇒簡単に言えば、主にウェルト製法でのコバと本底を縫い合わせる作業、またはその縫い目のこと。

    ちなみにマッケイ製法の場合はマッケイ縫い、もしくは本縫いと呼んで区別している。

 コレ

RIMG0128

 昨今ではこの出し縫いの細かさで優劣を語ることが多いと感じます。

 ちなみによく「12」とか「10」とかいう数字が出てきますが、これは「1インチ(25ミリ)のなかに縫い目がいくつあるか」ということです。
 上の画像は「10」になります。

RIMG0892

 こちらはワークブーツで、5~6といったところでしょうか。

RIMG0884

 こちらは「12」。

 ただし、気をつけて頂きたいのはそれが海外がベースなのか、それとも日本の伝統ある職人さんの仕事なのかで話は変わります。
 以前に読んだ雑誌では
 「この工房は16目の出し縫いを施す超絶技巧がある」
 なんて書いてありましたがその工房、日本が誇る伝統的工房なので「インチ」ではなく「寸」で換算します。
 つまり「25ミリ」ではなくて、「約30ミリ」の中に16目です。
 インチ換算すると12~3目になります。

 

 先日拝見した靴で「18」という、すごい出し縫いを施した物がありました。

 一見するとマッケイ製法にしか見えない、華奢なコバで実にエレガントでした。

 最近は「どこまで細かく縫えるか」という密かな戦いが、一部の若手職人さんの間で繰り広げられているようです。

 かくいうたなかも、実は「16」までは縫った経験があります。

 

 でも、こうも思います。
 「そんなことしてどうすんの?」

 なぜかというと、たなかは修理屋だからです。

 修理の場合、出し縫いは基本的には機械縫いです。
 そうすると、靴を傷めずに縫えるのはせいぜい「10」、がんばって「12」程度。
 それに、「16」なんて手で縫うためには縫い糸も極細にせざるを得ないため、そもそも縫う効果が薄すぎる。
 結果ボンドで留っているのと変わらない気がします。

 それに、大事なのはバランスだと思います。
 コバと本底の厚さ、コバの出幅と厚さ、アッパーの素材やデザインとのバランス。
 それらを考慮したうえでの出し縫いのピッチだと思うのです。

 

 それにもうひとつ。
 たとえば「16」目の靴を購入したとして、誰が修理するの?
 機械で縫えないなら自動的にフルハンドの底付けでしか修理ができず、オールソールの交換に5万円とか8万円といった金額になります。
 そんな靴、怖くて履けません。

 

 だから、たなかが自分で靴を作る時に大切にしてることは
 「普通の修理屋さんで修理ができる靴を作る」ことです。

 だからヴェヴェルドウエストもあまり好きではありません、機械で縫えないから。

 

 もちろん技術の向上を否定しているわけではありません。
 でも、そんなに細かい目で縫うために時間がかかって、そのかかった時間が価格に反映されるなら、納得いきません。

 以上、本日のツイッターでした。

 ツイッターっ‼(意味はない叫び)

靴修理と靴磨き Spica たなか

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