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「自分だけの“最高の一足”が欲しい」
既成の高級靴をひと通り履いてきた方が、次の一足として思い描くのが、ビスポークシューズの世界です。

自分の好みを100%足元に反映させられるフルオーダー形式だからこそ奥深い反面、具体的な特徴や注文の仕方、価格の理由まで、詳しくご存じの方は少ないかもしれません。

「ビスポーク」と聞くと、単に高価なオーダーメイド靴と思われがちですが、実は職人さんとじっくり対話をしながら自分の足に完璧に合わせるだけでなく、自らの美学や哲学まで一足の靴に映し出す、そんな究極の靴作りを指します。

この記事では「ビスポークシューズとは何か」という基本から、価格の内訳、注文の全工程、そして多くの人が心に抱く疑問まで、一つひとつ丁寧に解説していきます!

ビスポークシューズとは?

重厚感のあるアンティーク調の丸テーブルの上に、丁寧に磨き上げられた3足の高級紳士革靴。様々な色合いのブラウンレザーが美しい輝きを放っており、全てにシューツリーが装着されている。背景にはブランドロゴが入ったゴールドの額縁が飾られ、格調高い雰囲気を演出している。

まずビスポークシューズとは、足型をもとに木型をイチから作る「完全オーダーメイド」の革靴のことで、フルオーダーシューズとも呼ばれています。

よく比較される「セミオーダー」や「9分仕立て」などは、自分の好きなレザーや色合いにカスタマイズできるものの、既存の木型やパターンをもとにサイズや素材、色を選ぶ方式です。

一方ビスポークは、お客様の足の形や歩き方や好みを細かく測定・反映し、専用の木型(ラスト)をイチから作成します。その木型をベースに、デザインや細部仕様もすべて相談し、仕上げから納品まですべてが職人の手作業となります。つまり製作から完成まで「機械による一部効率化」が一切ない製法です。

つまり、自分だけの履き心地はもちろん「完全に思い通りのデザイン」「完全に世界に一点モノの靴」が叶うのはビスポークだけの特権なのです。

1:あなたの足を象った「木型(ラスト)」づくりから始まる

ビスポークシューズ最大の特長は、まさに“あなただけ”の「木型」をイチから作る点にあります。

まずは職人はお客様の足を細かく採寸します。ここでは長さや幅だけでなく、足の甲の高さや左右の微妙な違い、歩き癖まで丁寧に計測。こうして集めた情報をもとに、世界に一つしかない専用の木型(ラスト)が職人の手で削り出されていきます。

その木型はまるで足の“分身”のようなもので、これから進む靴づくりのすべての工程がこの木型に基づくため、既製靴やセミオーダーではどうしても妥協せざるを得なかった部分まで、細やかに調整できます。

例えば「片方だけ幅が広い」「甲が高い」といった個別の悩みにも的確に対応でき、最初の一歩から“ぴったりと包み込まれる感覚”を味わえるのがビスポークシューズならでは。靴が自分に合わせてくれる、この贅沢な体験こそ多くの人がビスポークに惹かれる理由です!

【実は】木型は「2足目のビスポーク製作」にも使える!

「一足のためにここまで…?」と思われるかもしれませんが、この木型は言ってしまえば“あなたの足”と同じわけですから、生涯で2足目以降をお作りいただく際にも使用することができます。

  • めちゃくちゃこだわった靴を「シーン別」で用意したい
  • イベント・催しで履く「柄違いのビスポーク」が欲しい

などなど、これからもいろいろなシーンでこだわった革靴を用意したいという方こそこの木型が活きてくるんです。

【スピカはセミオーダーでも左右差の調整OK!】

日当たりの良いオーダーメイドシューズの店舗内で、革張りの重厚な椅子に座る顧客(後ろ姿)に対し、ベストを着用した店員が、顧客と目線を合わせるように屈みながら、温かい笑顔で丁寧に接客・カウンセリングを行っている。大きな鏡には、親身に対応する店員の親しみやすい表情がはっきりと映し出されている。

人間誰しも「足の左右差」を持っています。靴、特に革靴においてこの「足の左右差の計測」は非常に大切で「片側だけ靴擦れを起こした…」というのもこの左右差から来ることが多いです。

当社では、ビスポークシューズでない方法であっても左右でサイズ違いの靴を作ることができますので、左右差による問題はある程度まではカバーすることができます。

ただし上でも説明したような、あなたの足に合わせた「あなただけの木型」を作るのはビスポークシューズだけであり、「値段を気にせず自分にぴったりの靴が欲しい」という方にはビスポークがおすすめです。

2:思い描いた「理想のデザイン」を形にできる

ビスポークシューズの大きな魅力のひとつが、デザインの自由度です。

既成靴やセミオーダーの場合、選べるカラーや素材、装飾にはどうしても限界がありますが、ビスポークならほぼ無限の選択肢が目の前に広がります。伝統的なストレートチップやモダンなローファーはもちろん、トウ(つま先)の形、ステッチの色やパターン、パーフォレーション(穴飾り)の位置や有無まで、隅々にあなたの「こだわり」が反映可能です。

さらに「色違いで左右非対称にしてほしい」「アッパーにはフランスのA社の最高級カーフを、内側のライニングには吸湿性の高いB社の革を」「この雑誌の写真のような靴がほしい」といった、専門的なリクエストも職人と直接話し合うことで実現できます。(こちらでご用意がある素材に限ります)

世界に一足だけ、自分だけの美意識やストーリーが反映された靴を作る体験こそ、既成品にはないビスポークの醍醐味なのです。

3:職人と“対話”しながら生まれる特別な一足

ビスポークシューズの醍醐味は、単なるオーダーではなく、「職人と顔を合わせて語り合いながら靴を作る」体験そのものにもあります。

ビスポーク(bespoke)はもともと“be spoken=語り合った”が語源。打ち合わせの時間から、すでにあなただけの靴作りは始まっています。

足や履き方・細かな悩みを伝えることで、職人はその人だけの歩き心地やライフスタイルに合わせた提案をしてくれます。「細身にしたい」「歩くときに圧迫感がないように」など、どんな想いも丁寧にくみ取り、職人の技術で形にしていく。

時には途中の仮合わせで「もう少しここを広げてみましょうか」と対話を重ねて調整が入ることも。まるで自分専属のパートナーと一緒に物語を紡ぎあげるような過程です。

この“対話”こそが、世界に一足しかない靴を生み出す原動力。完成した靴には、自分自身のこだわりと職人の情熱がしっかりと宿っています。箱を開けた瞬間から「この一足には特別な思い出が詰まっている」と実感できる、そんな“かけがえのない体験”が、ビスポークシューズならではの魅力です。

料金相場は40万円!なぜこれほど高価なのか?

革の工房で、靴職人が革のエプロンを身に着け、靴の木型(ラスト)に黒いペンでブローグ(穴飾り)のデザインを精密に描き込んでいる。手仕事によるオーダーメイドシューズ製作の、繊細で集中力を要する工程を捉えたクローズアップ。

 

ビスポークシューズの価格は、工房や職人の知名度、使用する素材、デザインの複雑さによって大きく変動しますが、一般的には40万円あたりがスタートラインと言われています。中には100万円を超えるものも珍しくありません。

ここからは、ビスポークシューズの料金の裏側に隠された魅力をご紹介します!

1:“唯一無二の木型”をつくるから

先ほどから解説していますが、ビスポークシューズはまず既製靴とは大きく異なる「木型作り」から始まります。

あなたの足長、幅、甲高、そして左右差までも細かく計測し、それらを元に職人が一から専用の木型を削り出します。この木型は、足の形だけでなく、歩き方や体重のかけ方を踏まえて調整されるため、一足ごとに全く異なり、まさに“あなた専用の足型のコピー”です。

こうした特注の木型づくりには高い技術と相応の時間がかかるため、その製作費用が上乗せされています。(一般的に5〜8万円程度)

この独自の木型がビスポークの履き心地の根幹であり、40万円を超える価値の土台となっています。

2:「レザーの選定幅」もワンランク上にできるから

大前提、革靴の質は「革・レザーの質」によって大きく変わります。

一般的な靴とは違い、使う革は熟練の職人が厳選した最高級レザーが基本です。さらに、傷や色ムラのない上質な一枚革だけを一足分に贅沢に使い、耐久性や質感に妥協しません。

中底や靴底も耐久性と歩き心地の両立を追求した特注素材が使われ、全てが“あなたのためだけ”に調達されます。素材のクオリティが高いほど、履けば履くほど足に馴染み味わいが増し、長く愛用できるのがビスポークならではの魅力。こうした素材選びのこだわりも価格に直結しています。

3:機械を一切使わず、すべて「職人の手作業」になるから

一足のビスポークシューズは、裁断、縫製、吊り込み、底付け、仕上げに至るまで、すべて職人の手作業で作られます。大量生産では不可能な細かな微調整や仕上げの丁寧さが際立ち、靴全体のバランスや美しさが深みを持ちます。

例えば、革の柔らかさに合わせた縫い目の強弱、木型にゆっくりと革をなじませる吊り込み技術など、職人の経験と技術が随所に活かされます。この“人の手の温度”が仕上がりの良さを支え、価格以上の価値を生み出しているのです。

4:何度も調整して“理想のフィット”を実現できるから

ビスポークシューズは製作の途中で仮靴を履いて歩き、微調整を重ねるプロセスがあります。仮靴の段階で足のどの部分が当たるか、歩行時の圧力や動きを確認し、そのデータをもとに木型や革のカット位置を修正します。

この工程があることで、一般的な靴では決して得られない、自分の足に完全に合った感覚が完成します。

個人差に合わせた調整を惜しまないため、履き始めから違和感なく使える“最高のフィット感”が生まれます。こうした繰り返しの細かな調整も価格に見合ったサービスとなる理由です。

5:一生履ける「耐久性」と「履き心地」が靴に出るから

ビスポークシューズは耐久性が非常に高く、正しい手入れと修理を繰り返せば一生履き続けられます

縫製がしっかりしており、革やミッドソール、中底が丈夫な構造だからこそ実現する強さです。また、グッドイヤーウェルト製法などの修理しやすい作りを採用しているため、アウトソール交換だけでなく内部構造の補修も可能。これにより、単なる「高価な靴」という枠を超え、長い年月でのコストパフォーマンスも極めて優秀です。

「一生もの」と呼ばれるにふさわしい質実剛健な靴の提供が40万円の価値を裏付けています。

このように、ビスポークシューズの40万円という価格は決して高すぎるものではなく、全く別次元の「足に合う木型」「最高級の素材」「精緻な手作業」「フィットさせるための調整」、そして「長く使い続けられる構造」に支えられているからこそ、真の価値として成り立っているのです。

【全6工程】ビスポーク注文から完成までの流れ

ここからは具体的にどんな流れで進んでいくのか、完成までにどれくらいの期間がかかるのかを詳しく解説します!

革の工房で、職人が革のエプロンを身につけ、大理石の作業台の上で、裁断されたヌメ革のパーツを丁寧に手で組み立てている。パーツにはブローグ(穴飾り)が施されており、手前には靴作りの金槌が置かれている。手仕事による靴製作の精密な工程を捉えた一枚。

STEP1:相談・カウンセリング(初回訪問)

ビスポークシューズの注文は、まず店舗や工房でのカウンセリングから始まります。

ここではお客様の靴に対する希望や普段の使用環境、歩き方のクセやお悩みをじっくりお聞きします。デザインのイメージや用途(仕事用、普段使い、特別な場面など)も細かくヒアリングし、その場で様々なスタイルサンプルや革の見本を見比べながら“どんな靴を作りたいか”を一緒に考えます。

疑問や不安にも丁寧に答えながら、納得のいく方向性を見つける大切な時間です。

STEP2:採寸・木型設計

次の段階は、あなたの足を精密に採寸すること。足の長さや幅だけでなく、甲の高さ、足裏の形、さらには左右差や歩くクセまで細かくチェックします。

これらのデータを元に、職人が一から専用の木型(ラスト)を作り上げます。木型は靴の骨格であり、ここでの設計ミスがないように何度も確認しながら削り出すため、時間がかかります。

この工程が、履き心地やフィット感のベースになるため、とても重要です。お客様の足の特徴を忠実に再現し、歩きやすく疲れにくい靴の土台をつくることに職人の技と時間がしっかり注がれます。

STEP3:仮縫い靴の製作と試着・調整

専用の木型が完成したら、次は仮縫い用の靴を製作します。

仮縫い靴は本番ほどの仕上げではありませんが、形やサイズ感、歩行時のフィット感を実際に試してもらうための重要なモデルです。

試着時には職人と一緒に歩きながら、どこに違和感があるかを細かくチェック。足が当たる部分の調整やフィット感の微調整を繰り返し行い、必要に応じて木型やパターンを修正していきます。これによって、自分の足にぴったり合った唯一無二の靴の設計が固まっていきます。

じっくり時間をかけて、自分だけの履き心地を追求できる工程です。

STEP4:本番製作(製甲・釣り込み・底付け)

仮縫いで得たフィードバックを反映した木型を使い、本番のシューズ作りが始まります。

まずは選んだ最高品質の革を裁断し、丁寧に縫製してアッパー(甲革)を組み上げます。次に、革を木型に吊り込み、自然なシェイプを形作る工程に入ります。この「釣り込み」は職人技の見せどころで、革を均一に張りながら立体的なフォルムに仕上げます。

最後にソールを取り付ける「底付け」作業に移り、強度と履き心地を両立させるための細かな手作業が続きます。この段階では、靴はほぼ完成形となり職人の技術が集大成となって現れます。

STEP5:仕上げ・納品

靴本体が完成すると、最終の仕上げに入ります。エッジの磨きや染色、細かな補正を職人が丁寧に行い、見た目の美しさと使い心地を高めます。

革の光沢や縫目の整い具合などを慎重にチェックし、お客様の期待を超えるクオリティを目指します。仕上がった靴は店頭で最終試着してもらい、履き心地やサイズの最終確認を行います。すべてに満足いただけたうえで、いよいよお引き渡しです。

STEP6:アフターケア・メンテナンス

ビスポークシューズは購入後のケアも重要です。

定期的なクリーニングや栄養補充、擦り減ったソールの交換など、職人や専門店がしっかりサポートします。履き続けるごとに靴は足になじみ深みが増していきますが、濡れや過度な乾燥は避けたいポイントです。

また、長期間使うための修理にも対応しており、靴を“育てる”楽しみを味わえます。購入後も職人とのつながりが続き、靴の健康状態を守りながら長く愛用できることが、ビスポークシューズの真の価値です。

ビスポークシューズ製作時によくある質問

Q:どんな人に向いてる?向いていない?

A:ビスポークシューズは誰にでもおすすめできるものではありません。

  • 靴に対して明確なこだわりや理想のデザインがある方
  • 長く愛用できる、本質的に価値のあるモノを求める方
  • 職人との対話や、モノづくりのプロセスそのものを楽しみたい方
  • 既製靴では足に合うものが見つからない(外反母趾、甲高、幅広、左右差など)

といった方にビスポークシューズをご提案しています。

Q:職人とのコミュニケーション、どうすればいい?

A:「専門知識がないから、うまく要望を伝えられるか不安…」と感じる必要は全くありません。靴を作る職人は、靴職人であるのはもちろん「革靴好き」でもあります。あなたの曖昧なイメージや、感覚的な言葉を丁寧に汲み取り、それを具体的な形に落とし込む手助けをします。

大切なのは、背伸びせずに正直に「自分の想い」を伝えること。

「こんな風に見られたい」「このジャケットに合わせたい」「とにかく楽なのが一番」など、あなたのライフスタイルや価値観をぜひお聞かせください。

Q:修理はどこまで可能?一生履けるって本当?

A:ビスポークシューズは「一生履ける革靴」です。多少の傷・汚れはもちろん、ソールのすり減りから糸の緩みまですべて修理メンテナンスで修復可能です。

またスピカにご相談いただければ、革が傷つきづらくなる靴磨き(鏡面磨き)などもサポートしておりますのでご安心ください。

一生モノの“履き心地”をあなたに、
ビスポークオーダーならスピカにお任せください。

結婚式や特別な日の準備風景。ベストを着用したフォーマルな服装のスタッフが、スーツ姿の顧客の足元にひざまずき、黒い革靴の紐を丁寧に結び直している。最高級のおもてなしとパーソナルなサービスを象徴する一場面。

ビスポークシューズは、単なる高級靴ではありません。自己表現の究極の形であり、人生を共にする「相棒」そのものだと私たちは考えています。

究極のフィット感や無限のデザイン自由度はもちろんですが、その本質は、職人との対話を通じて自分だけの物語を創造する、その特別な体験にあります。

また「革靴オーダーは初めてだけど、どうせなら最初から一生モノのこだわり靴を」と、ビスポークをご注文される方もいらっしゃいますので、革靴の知識にかかわらず、ぜひ一度スピカにご相談くださいませ。

あなたの“一生の相棒”を、あなたと一緒におつくりいたします。