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光沢が魅力のコードバン革靴。独特の輝きと履くほどに自分だけのものになっていく感覚から、革靴好きに愛される革のひとつです。

しかしいざ購入を考えると「コードバンって硬いの…?」「手入れが難しいって本当…?」「そもそもどんな革なの…?」といった不安があると思います。

結論から言うと、コードバン革靴は「正しい知識」を持って選べば、一生履ける“あなたの相棒”となる革靴です!

本記事では「そもそもコードバンって何なのか?」をはじめ、コードバン革靴の選び方、メンテナンス方法まで革靴のプロが詳しく解説します!

この記事を読めば、こんな悩みが解決します!

  • コードバンってどんな革?
  • コードバンの何がいいの?
  • コードバン革靴はどう選べばいい?
  • コードバンの「正しいメンテナンス方法」は?
  • もしもの時の傷や水濡れの対処法は?

大前提:「コードバン」ってどんな革?

緑豊かな牧草地で、風に黒い尻尾をなびかせている茶色い馬の後ろ姿。

まずはコードバンがどのような革なのか、から解説していきます!

コードバンとは、馬の臀部(お尻)から採れる高密度な繊維層を持つ革のことです。一頭の馬からごく僅かな量しか採れず、その希少性と美しさから「革のダイヤモンド」とも呼ばれています。

もう少し詳しく特徴を深掘りしていきましょう。

コードバンの3つの特徴

コードバンが特別な革として扱われる理由は、主に3つあります。

他の革にはない「美しい光沢」がある

まずコードバン最大の魅力は、他のどんな革とも違う「独特の光沢」です。

牛革などにある「銀面」と呼ばれる表皮層がなく、非常にキメ細かい繊維組織が露出しているため、まるで磨き上げられた宝石のような、滑らかで深みのある輝きがあります。

新品の時点でも美しいですが、履き込んで手入れを重ねることで、さらにその艶は増していき、この経年変化(エイジング)こそが、コードバンを育てる醍醐味となっています!

圧倒的な耐久性(「牛革の3倍の強度」とも)

見た目の美しさはもちろんですが、コードバンは非常に頑丈な革です。

これはコードバンの繊維が緻密に詰まっているため、牛革の3倍もの強度を持つと言われています。

若干しなやかさ(柔らかさ)には欠けるものの、その分「型崩れ」が起きにくく、大きな傷が付きにくいのが特徴です。適切に手入れをすれば、ソールを何度も交換しながら何十年と履き続けることが可能です。

そもそも希少で手に入りにくい

導入でも少しお話しましたが、コードバンは馬の臀部(お尻)のごく一部からしか採れません。

さらにその原皮を鞣(なめ)して革に仕上げる工程には、半年以上必要で、製造できるタンナー(製革業者)も、実は世界で数社と限られているんです。

この希少性がコードバンの価値をさらに高め、所有する者だけが味わえる特別な満足感に繋がっています!

よく比較される牛革(カーフ)との違いは?

革靴の代表的な素材である牛革、特に高級靴に使われるカーフ(生後6ヶ月以内の子牛の革)とコードバンは、似ているようで全く異なる個性を持っています。

比較項目 コードバン 牛革(カーフ)
柔軟性 硬く、伸びにくい。足に馴染むのに時間がかかる。 柔らかく、しなやか。履き始めから足に馴染みやすい。
履き心地 慣れると足をしっかりホールドする独特のフィット感。 包み込むような優しいフィット感。
光沢 素材自体が持つ、濡れたような強い光沢。 磨き込むことで生まれる、上品で落ち着いた光沢。
シワ 波打つような、大きく緩やかなシワが入る。 細かく、繊細なシワが入る。
耐水性 水に非常に弱い。濡れると「水ぶくれ」ができやすい。 比較的、水に強い。
手入れ デリケートなため専用クリームが必要。手間はかかる。 比較的手入れは容易で、扱いやすい。

ここではよく比較される牛革との違いをまとめましたが、当然「どちらが良い」というわけではなく、それぞれに魅力があります。

エレガントで柔らかな履き心地を求めるならカーフ、堅牢で独特のエイジングを楽しみたいならコードバンと、自分の履きたいシチュエーションにあわせて革靴を選ぶのが大切というわけです!

<<公開後、革靴_選び方記事へ内部リンク>>

【職人コラム】プロが診る「革の性格」について

革の工房で、職人が革のエプロンを身につけ、大理石の作業台の上で、裁断されたヌメ革のパーツを丁寧に手で組み立てている。パーツにはブローグ(穴飾り)が施されており、手前には靴作りの金槌が置かれている。手仕事による靴製作の精密な工程を捉えた一枚。

スペック上の違いだけでなく、日々革に触れている私たち職人は、コードバンとカーフを「全く別の生き物」だと考えています。

カーフがしなやかな「筋肉」だとすれば、コードバンは緻密な「骨」に近い質感です。例えば、革を削る作業でも、カーフは繊維がほろほろと崩れるように削れるのに対し、コードバンはまるで樹脂の板のように、スパッと面で切れます。

また履きジワの入り方も異なります。コードバンは曲げるとその部分の繊維が少し立ち上がり、毛羽立つことがあります。これが「銀浮き」と呼ばれる現象で、水ぶくれも原理は同じです。私たちはこれを鹿の骨などでできた専用の道具(レザースティック)で寝かしつけ、滑らかに戻します。

浅い擦り傷ならブラッシングだけで繊維が整って消えてしまうこともコードバンならでは。

私たち靴職人は、単にデザインで靴を提案するのではなく、このような「革ごとの性格」も正しく理解しつつ、あなたのライフスタイルに合っているか?も踏まえて、最適な一足をご案内いたします。

購入前に読みたい!コードバン革靴の選び方!

ここからは、実際にコードバン革靴を選ぶ際のポイントを解説します!

あなたにとって最高の一足を見つけていただくキッカケとして、ぜひ参考にしていただければと思います!

まずは「サイズとフィッティング」を最優先!

コードバンに限った話ではありませんが、革靴選びで最も重要なのが「サイズ選び」です。

特にコードバンは、牛革のように大きく伸びることが少ないため、最初のフィッティングが非常に大切になります。(もちろん革ですので、ある程度足型にフィットするように成長します)

結論、コードバン選びでは「ジャストサイズ」を推奨します。

「痛いほどキツい」のは非推奨で、履き始めに指が強く当たったり、甲が圧迫されたりする靴は、特に履き始めに痛みが残る可能性がありますので注意が必要です。

理想は、指先に少し余裕(捨て寸)がありつつ、甲周りと踵がしっかりとホールドされている状態です。

ブランドやモデル(木型)によってサイズ感が異なるため、可能であれば必ず試着をしてください。

【職人コラム】よくある失敗は「サイズが合わないこと」

当社でもよくご相談いただくコードバン靴のお悩みは「サイズ選びに失敗しまして…」という内容です。

「履いていれば伸びると思った」「少しキツい方が格好いいかと思った」と、小さめのサイズを選んでしまい、結局痛くて履けなくなってしまった…、というケースがやはり多い印象です。

もちろん履きこむことで自分の足にフィットしていくようにはなりますが、例えば「今履いている牛革靴も、小さめサイズでフィットしたから」という感覚で選ぶと、痛みを感じてしまうケースもありますので注意いただければと思います。

長く愛せる「モデル(デザイン)」を選ぶ!

長く付き合う一足だからこそ、デザイン選びも重要です。コードバンはクラシックなデザインと特に相性が良いです。例えばですが、

プレーントゥ(外羽根式)

甲に飾りのない、最もシンプルなデザイン。コードバンの美しい光沢と、波打つような独特の履きジワを堪能できるため、最初の一足として人気。

ウィングチップ

つま先から踵まで続くW字型の飾りが特徴的な、アメリカントラッドを象徴するデザイン。カジュアルなスタイルとの相性も抜群。

ローファー

革が伸びにくく型崩れしにくく、甲の部分が広いためコードバンの面積を存分に楽しめます。

当社では上記のようなデザインの靴モデルを選んでいただくことを推奨しています。

またイチからオーダーいただく「セミオーダー・フルオーダー製作」なら、自分の欲しいデザインでコードバン革靴を製作できますので、もし具体的なデザインがあれば、ぜひオーダーシューズも検討してみてはいかがでしょうか!

コードバンを採用した「オーダーシューズ」について

ここまでコードバン革靴の選び方について解説してきましたが、「自分の足に合うブランドが見つからない」「デザインは良いけれど、サイズが合わない」といった悩みもあるかと思います。

そこで私たちスピカでは、コードバンの弱点でもある「サイズ感の悩み」を解決する“革靴オーダーメイド”をご提案しています。

既製品を選ぶのではなく「自分だけの一足を作る」という方法です。当社のオーダーメイドについてもご紹介していきます!

オーダーメイドが選ばれる理由は?

特にコードバン革靴のオーダーメイドでは、以下3つのメリットがあります。

メリット1:コードバンの弱点である「フィット感」を調整できるから

職人が、あなたの足を正確に採寸して調整を行うため、左右差や甲高、幅広といった個々の悩みにに対応できます。

長時間履いても疲れにくい、まるで体の一部のような履き心地が手に入ります。

メリット2:「デザインの自由度」が高いから

革の種類や色、ソールの仕様、細かなデザインまで、すべて自分好みにカスタマイズできます。「世界に一足だけ」の、あなたの理想を詰め込んだ靴を作ることが可能です。

メリット3:既製品では実現しにくい「一生モノの履き心地」を追求できるから

一足一足を職人が手作業で丁寧に作り上げるのはもちろん、一生履く、つまり「不具合があった場合も修理可能な製法」でおつくりするため、もし履き潰してしまった場合も修繕が可能。

あなただけの一生モノの履き心地を追求できる製法だからこそ、コードバン革靴をオーダーメイドで製作される方が多くいらっしゃいます。

作って終わりじゃない、購入後の「手厚いサポート」もお任せください。

スピカのオーダーメイドは「作って終わり」ではありません。革靴は「買っていただいてからが、本当のお付き合いの始まり」だと考えています。

私たちが製作したオーダーシューズは、プロによる靴磨きを生涯無料でご提供しています。

またオールソール交換などの修理が必要になった際も、通常価格から15%割引で承りますし、もちろん履き始めてから気になる部分が出てきた場合のフィッティング調整も対応いたします。

これは私たちが自社の製品に責任を持っていること、そして「お客様に最高の状態で、一生モノの履き心地を体感いただきたい」という想いから実施しております。

ですので初めてのオーダーはもちろん「そもそも革靴が初めて…」という方もぜひお気軽にご相談ください。

【購入後はどうする?】コードバンのメンテナンス方法!

暗く落ち着いた雰囲気の中、職人が光沢のあるバーガンディ色の革靴を手に持ち、ブラシで丁寧に磨き上げている様子。手元には靴クリームの瓶も見える。

コードバン靴の輝きを長く保つためには、適切なお手入れが欠かせません。

ここからはコードバン靴のメンテナンス方法について詳しく紹介していきます!

まずは揃えたい「メンテナンス道具」について

まずは、メンテナンス用の道具からご紹介します!

馬毛ブラシ

ホコリ落としや、クリームを馴染ませてツヤを出すために使います。柔らかい馬毛がコードバンに適しています。

柔らかい布

クリームの塗布や最後の乾拭きに使います。「ネル生地」という生地材を推奨していますが、着古したTシャツなどでも代用できます!

コードバン専用クリーム

革に栄養を与え、ツヤを出すためのクリームです。油分が少なくロウ分の多い専用品を選びましょう!

シューツリー

型崩れを防ぎ、湿気を吸収してくれる必需品です。シューケアの際に形を整えるのはもちろん、普段家に帰ってから、型崩れを防ぐために入れておくべきアイテムですので、お持ちの革靴分揃えていただくことを推奨しています!

毎日のケアについて(履き終わりのケア)

基本的に革靴メンテナンスは「履き終わり(1日の終わり)」でOKです!

ケア①:軽いブラッシング

靴を脱いだ後、馬毛ブラシで全体のホコリや汚れを優しく払います。これだけで、革本来のツヤが蘇ります。

ブラッシングは必須ではないのですが…、長期間ブラッシングを行わないと、汚れやホコリが靴クリームなどと合わさって固まってしまい、汚れが取りづらくなってしまいますので、可能であれば履き終わったタイミングで玄関でサッとブラッシングしていただくのが最適です!

ケア②:シューツリーを入れる

ブラッシング後、シューツリーを入れて形を整え、風通しの良い場所で保管します。

大切なのは、履くたびにこれらを習慣にすることです。日常的なクリームの使用などは、油分過多になり革を傷める原因になるため不要です。

1〜2ヶ月に一度は“入念なメンテナンス”も!

1〜2ヶ月に1回、もしくは「革が少し乾いてきたな」「ツヤが鈍ってきたな」と感じたタイミングで、クリームを使ったケアを行いましょう!

以下の手順でメンテナンスを進めてみてください。

  • 馬毛ブラシで丁寧にブラッシングし、ホコリを落とします。
  • 米粒一つ分ほどの少量のコードバン専用クリームを布に取り、全体に薄く、均一に塗り伸ばします。
  • クリームが浸透したら、再びブラッシングを行います。クリームを革全体に行き渡らせるイメージで、リズミカルにブラシを動かすと、徐々にツヤが出てきます。
  • 最後に、布の綺麗な面で優しく乾拭きし、余分なクリームを取り除きながら光沢を整えれば完了です。

ポイントは「クリームを塗りすぎないこと」。少ない量を薄く伸ばすのが、美しい光沢を出すコツです!

初めての方へ|スピカの「靴磨き教室」もご利用ください!

近年はYouTubeをはじめ「靴磨き・メンテナンス動画」も多く出回っていますが、こだわりの一足を「手順間違いでだいなしにしたくない…」という悩みもあると思います。

そこで当社では、正しい革靴の手入れ方法と磨き方を知っていただける「靴磨き教室」を実施しています。

ご用意いただくのは、ご自身で磨きたい靴1足のみ。教室内では実際にお客様ご自身も手を動かしていただくためどなたでも1日で、靴磨きの基本をご理解いただけます。

  • 道具の正しい使い方と選び方
  • 正しい靴磨きの手順と基礎知識
  • 長持ちさせるメンテナンス習慣

などなど、基礎知識はもちろん長持ちさせるための必須テクニックまで伝授しますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います!

関連ページ:『スピカの靴磨き教室|革靴オーダーメイドは元麻布スピカ

コードバンの注意点と対処法について

雰囲気のある薄暗い中で、職人が白い布を指に巻き、光沢のあるブラウンの革靴のつま先に丁寧にクリームを塗り込んでいる手元のクローズアップ。背景には複数のシュークリームの缶がぼやけて見える。

1:水に濡れて「水ぶくれ」ができてしまったら

実はコードバンは水に弱いという弱点があります。

雨などで濡れてしまうと革の繊維が膨張し、表面に「水ぶくれ(凹凸ができてしまう)」ことがあります。もし濡れてしまったら、慌てずに以下の手順で対処してください。

  • 乾いた布で、擦らずに優しく押さえるように水分を吸い取ります。
  • シューツリーを入れ、風通しの良い日陰で、丸一日以上かけてゆっくりと自然乾燥させます。ドライヤーや直射日光は絶対に避けてください。
  • 完全に乾いた後、水ぶくれができていたら、指の腹や瓶の底のような滑らかなもので、優しく押し潰すように圧をかけていきます。多くの場合、これである程度目立たなくなります。
  • 最後に少量のクリームで保湿とツヤ出しをすれば完了です。

それでも改善しない場合は、革靴専門店や修理工房に相談してください。

2:表面にキズがついてしまったら

小さな擦り傷であればご自宅でも簡単に対処できます。

浅いキズの場合

まずは傷の周辺を指の腹で優しく擦ってみてください。

これだけで傷が馴染んで消えてしまうこともあります。消えない場合は、しっかりとしたブラッシングや、布での乾拭きを試してキズが消えるかを確認しましょう。

ここでの注意点は「水拭きしないこと」です。もし乾拭きでキズが消えない場合は、以下の方法を試してみてください。

少し深めのキズの場合

傷の部分にごく少量のコードバンクリームを指で叩き込むように塗り、周囲と馴染ませます。その後、ブラッシングと乾拭きで仕上げます。

それでも消えない場合は、当社のような靴修理を行っている専門店へお越しください。

まとめ:貴重な革靴だからこそ、正しいメンテナンスで「一生履ける靴」に仕立てましょう!

本記事では、コードバン革靴の魅力から選び方、プロが実践する手入れの方法まで詳しく解説してきました。

コードバンは少しデリケートで、付き合い方にコツがいる革なのですが、革自体が希少なのはもちろん、他の革にはない光沢など、魅力が詰まった革素材なのです。

最後に、この記事の要点を振り返ります。

  • コードバンの本質:「革のダイヤモンド」と呼ばれるほどの光沢・耐久性・希少性が魅力。
  • 後悔しない選び方:何よりも「完璧なサイズ選び」が重要。
  • プロの付き合い方:日々の手入れは「ブラッシング」を習慣に。クリームは月1回程度で十分。
  • もしもの時の対処法:水濡れや傷も、正しい知識があれば慌てずに対処可能。

コードバン革靴は、手入れを重ねるほどに愛着が湧き、あなたの生き方そのものを足元から支えてくれる、まさに「生涯の相棒」です。

コードバンはもちろん、本記事を読んで少しでも「革靴」に興味がでてきましたら、ぜひスピカにご来店いただければとおもいます。

あなたの足にあった「一生モノの履きやすさ」を詰め込んだオーダーシューズをご提案いたします。