大切な革靴を、もっと長く美しく履くために。
大切な革靴だからこそ、正しい手入れで長く綺麗に履きたいけれど、「やり方がわからないし、失敗してダメにしたくない…」と、難しく感じていませんか?
一見難しそうに見える靴磨きも、各ステップが「なぜ必要なのか」を理解すれば、やることは非常にシンプル。
この記事では、そもそもなぜ革靴を磨く必要があるのか?から、具体的なやり方まで徹底解説します!
この記事を読めば、こんな悩みが解決します!
- そもそもなぜ靴磨きが必要なのか
- 用意しておきたい道具
- プロが教える靴磨きの基本5ステップ
- 初心者がやりがちな失敗例と対策
- 忙しい人でも続けられる簡単なお手入れのコツ!
そもそも:靴磨きってなぜ必要?

手順を覚える前に、そもそも靴磨きが革靴にとってなぜ重要なのかを知っておきましょう。 手入れの目的を理解すれば、各ステップの作業にも納得でき、手入れの質がぐっと上がります。
1. 見た目の美しさを保ち、好印象を与える!
どんなに良いスーツを着て、どんなにおしゃれをしていても、足元の靴が汚いと全体の印象は決してよくなりません。
特にビジネスシーンでは、足元が第一印象に繋がることも少なくありません。 革靴は日々履き続けるものですから、知らないうちに傷みが広がったり、色あせたりもしてきます。
「汚れを落とし、光沢を与える」ことはもちろんですが、傷みがあればそれを隠すように、色あせがあればクリームやワックスで輝きを取り戻す。このように、足元を美しく保つためには、靴磨きはとても大切なのです。
2. 革の乾燥を防ぎ、ひび割れから守る!
革靴に使われている革は、もともと“動物の皮”です。
加工されて製品になると、当然ながら油分や水分を自ら補うことはできなくなります。 何のケアもしなければ、革はどんどん乾燥し、劣化が進んでしまいます。
革は人間の肌と同じ。乾燥すると柔軟性を失い、ひび割れといった回復が難しいダメージにつながりかねません。 クリームで油分と水分をしっかり補給してあげることが、革の劣化を防ぐ上で欠かせないのです。
3. 汚れやカビを予防する!
手入れは、一度ついてしまったダメージを修復するだけでなく、革を良いコンディションに保つ「予防」の役割も担っています。
履き続けた靴には、ホコリや泥などの汚れが思った以上に付着しています。汚れをそのままにしておくと、カビの原因になったり、革の劣化やひび割れにつながったりします。
特に湿気の多い季節は、菌が繁殖しやすくなるため、ニオイの原因になるだけでなく、ひどい場合にはカビが生えてしまうことも考えられます。
【プロも使う!】靴磨きに必要な基本の道具5選!

靴磨きを始めるのに、たくさんの専門的な道具は必要ありません。 まずは、最低限これだけは揃えておきたい基本的な道具を紹介します。 それぞれの役割を理解して、道具選びの参考にしてください。
- 馬毛ブラシ
- クリーナー
- クリーム
- 布
- 豚毛ブラシ
- シューキーパー
①:馬毛ブラシ
靴全体のホコリを落とすためのブラシです。
靴磨きには主に「馬毛ブラシ」「豚毛ブラシ」や「羊毛ブラシ」などを使用しますが、馬毛ブラシはに毛が柔らかく、大切な革を傷つけることなく、ホコリを効率的に取り除けます。
普段のホコリ落としで豚毛ブラシなどの硬いブラシを使ってしまうと、
②:靴クリーナー(クリーム落とし用洗剤)
古いクリームや、革に染み込んだ手強い汚れを落とす役割があります。
これによって革をいわば「すっぴん」の状態に戻し、新しいクリームが浸透しやすくなります。
③:靴クリーム(ワックス)
革に油分と水分を補給し、潤いを与える大切な役割を担います。乾燥によるシワやひび割れを防ぎ、革の良い風合いを保ってくれます。
④:布(推奨…ネル生地)
クリーナーやクリームを塗ったり、最後の乾拭きに使ったりします。着なくなったTシャツなど、柔らかい布であれば問題ありません。
プロ推奨は柔らかくワックスを馴染ませやすい「ネル生地」です。
⑤:豚毛ブラシ
クリームを革にしっかりと馴染ませ、ツヤを出す仕上げの役割があります。馬毛ブラシよりも毛が硬く、コシがあるのが特徴です。
⑥:シューキーパー(シューツリー)
革靴の形をホールドする木型です。
靴の履き終わりに形を整えておく役割はもちろん、靴磨きなどシワやヨレが起こってほしくないケースにも使用します。
革靴の靴磨きのやり方は「5ステップ」!

それでは、具体的な手入れの手順を解説していきます。 5つのステップには、それぞれ大切な目的があります。
- 準備(靴紐を外し、シューキーパーを入れる)
- ブラッシングで全体のホコリを落とす
- クリーナーで古いクリームや汚れをリセット
- クリームで革に栄養を与える
- 仕上げのブラッシングと乾拭きでツヤを出す
ステップ1:準備(靴紐を外し、シューキーパーを入れる)
まず、靴紐やバックルが付いている場合はすべて取り外しましょう。
こうすることで、紐などと重なった部分の革や、タンと呼ばれる泥除け部分の汚れも、隅々まで落としやすくなります。
次に、シューキーパーを入れます。シューキーパーは、靴の形をきれいに保つための大切な道具です。 シューキーパーを入れると、履きジワがしっかり伸びるので、手入れがしやすくなるだけでなく、クリームの塗りムラも防げます。
ステップ2:ブラッシングで全体のホコリを落とす
馬毛ブラシを使って、靴の表面を優しく、しかし念入りにブラッシングし、ホコリや泥などの汚れを落としてください。
力を入れすぎず、均一に、全体をまんべんなく磨くのがコツです。 靴底と本体の隙間(コバ)やタンの付け根など、細かい部分は、使い古しの歯ブラシを使うと便利です。
ステップ3:クリーナーで古いクリームや汚れをリセット
革用の汚れ落とし(クリーナー)を柔らかい布に少量取り、革にしみ込んだ汚れや古いクリームを丁寧に拭き取っていきます。
円を描くように優しく拭き上げるのがポイントです。 これによって革をスッピンの状態に戻し、新しいクリームの浸透性を高めることができます。 ヒール周りや靴底の汚れも忘れずに拭き取れば、カビの原因菌も除去できます!
ステップ4:クリームで革に栄養を与える
しっかり汚れを落として革がリセットされたら、栄養補給です。
保革専用のクリームを柔らかい布に適量取り、靴全体にまんべんなく、薄く塗り広げていきましょう。 適度な潤いを与えることで、表面のシワやひび割れを防ぎ、革本来の風合いを保つことができます。
ただし、塗りすぎは禁物。ベタつきやカビの原因になるため、「少し足りないかな?」と感じるくらいの量を意識してください。
ステップ5:仕上げのブラッシングと乾拭きでツヤを出す
最後に、豚毛ブラシを使って、再度全体をブラッシングします。 この作業で余分なクリームを取り除きつつ、革の中から自然で上品なツヤを引き出すことができます。
ブラッシングが終わったら、何もついていない柔らかい布(グローブクロスなどがあれば最適です)用意して、全体を優しく乾拭きしてください。これで、一連の工程は完了です!
革靴をダメにするかも?靴磨きでやりがちなNG例

正しい手順を覚えたところで、初心者のうちについやってしまいがちな「NG例」をご紹介します。 事前に知っておくことで、大切な靴をうっかり傷めてしまうリスクを避けましょう。
基本的なNG例
正しい手順を覚えたからといって、すぐに完璧にできるわけではありません。実は、靴磨きには初心者が陥りがちな「落とし穴」がいくつか存在します。
良かれと思ってやったことが、かえって革を傷める原因になってしまうことも少なくないのです。事前に知っておくだけで防げる失敗ばかりですので、大切な一足を長く愛用するためにも、ぜひ目を通しておいてください。
クリームの塗りすぎ
クリームを多く塗れば塗るほど良い、というわけではありません。
塗りすぎは革の通気性を損ない、逆効果になることがあります。 ベタつきやカビの原因にもなるため、適量を心がけましょう。
力任せのブラッシングや汚れ落とし
汚れを落としたいからといって、力任せにゴシゴシこするのは禁物です。
力を入れすぎると革の表面を傷つけ、色落ちの原因になることも。 「優しく、撫でるように」という力加減を意識してください。
濡れた靴への手入れ
雨などで濡れた靴は、すぐに手入れをしたくなるかもしれませんが、焦りは禁物です。
濡れた状態でクリームを塗ると、革内部の水分が抜けなくなり、カビの原因になってしまいます。 必ず風通しの良い日陰でしっかり乾燥させてから、手入れを始めてください。
色の違う靴でのブラシの使い回し
黒い靴に使ったブラシを、そのまま茶色い靴に使うのは避けましょう。
ブラシに残った黒いクリームが移ってしまい、シミの原因になることがあります。 ブラシは靴の色ごとに使い分けるのが理想です。
特殊な革でやってはいけないこと
一口に革靴といっても、その素材は様々です。スエードやコードバン、ガラスレザーといった特殊な革は、それぞれ特性が大きく異なります。
一般的な革靴と同じ感覚で手入れをしてしまうと、シミや質感の変化など、取り返しのつかないダメージにつながることも。ここでは代表的な特殊レザーについて、最低限知っておきたいお手入れのNGポイントを解説します。
スエード・ヌバック:液体クリームはNG
スエードやヌバックのような起毛革に、一般的な液体クリームやクリーナーを使うのはNGです。
起毛が寝てしまい、シミになって元に戻りなくなります。手入れは基本的に、専用のブラシとスプレーで行います。
コードバン:水濡れと強力なクリーナーは非推奨
馬のお尻の革であるコードバンは、繊維が非常に緻密で独特の光沢を持つ高級素材ですが、その反面、水には非常に弱いという弱点があります。
雨などで濡れると表面が盛り上がってしまう「水ぶくれ」ができやすいため、水濡れは避けましょう。また、強力なクリーナーはコードバン特有の油分を奪いすぎてしまい、光沢を失う原因になるため、使用は避けるべきです。
ガラスレザー:油性クリームの使用はNG
ガラスレザーは、革の表面を樹脂でコーティングした加工革です。水に強く汚れがつきにくいメリットがありますが、油性のクリームを塗っても内部に浸透しないため、使用は避けましょう。
表面に残ったクリームはベタつきや曇りの原因になってしまいます。お手入れは、専用の乳化性クリームや乾拭きで行うのが基本です。
靴磨きの適切な頻度は?忙しい人向けの簡単な手入れ方法

「どれくらいの頻度で磨けばいいですか?」とよく質問されますが、実は決まった答えはありません。 大切なのは、画一的なルールに縛られるのではなく、あなたの靴の状態をよく観察することです。
より大切にしたい手入れのサイン
大切なのは、“革の状態”を見て判断することです。
「革の表面が、なんだかカサついてきたな」「以前のような輝きが鈍ってきたな」 もしそう感じたら、それが靴が出している手入れのサインです。日頃から靴を観察する習慣が、靴への理解と愛着を深めることにつながります。
毎日できる「30秒ブラッシング」
とはいえ、5つのステップをすべて行うのが面倒だと感じる日もあるかもしれません。もしそうなら、これだけはやってみてください。 それは「履いたその日に、馬毛ブラシでホコリを払う」ことです。
たったこれだけの「30秒習慣」で、革靴の寿命は大きく変わります。
革の表面に付着したホコリは、革が呼吸するのを妨げ、油分を奪って乾燥を招く原因になってしまいます。 この一手間が革を健やかに保ち、ここぞという日の手入れをぐっと楽にしてくれます。
本格的なクリームを使った靴磨きは、革が乾燥してきたと感じたとき、たとえば月に一度で十分です。まずはこの簡単な習慣から始めましょう!
プロの技で輝きが蘇る。革靴との暮らしをもっと豊かに
正しい手入れの方法を知れば、革靴はもっと身近な存在になります。
【この記事のポイント】
- 靴磨きは見た目だけでなく、革靴を長持ちさせるために不可欠
- 必要な道具は、まず基本の5つを揃えれば問題なし
- 「準備→ホコリ落とし→汚れ落とし→栄養補給→仕上げ」の5ステップが基本
- クリームの塗りすぎや、濡れた状態での手入れは革を傷める原因に
- 毎日の簡単なブラッシングが、革靴の寿命を大きく延ばす!
ご自身の手で革を磨き、少しずつ変化していく表情を眺める時間は、靴への愛着をより一層深めてくれるはずです。しかし、革は生き物。
日々のケアでは対応しきれない深い傷や落ちない汚れに、どうすれば良いか分からなくなる時がくるかもしれません。そんな時は、どうぞ無理せず私たち専門家にご相談ください。
当社スピカでは、熟練の職人が一足一足の状態を丁寧に見極め、その靴が持つ本来の輝きを最大限に引き出します。また、ご自宅でのケアの質が上がるプロのコツをお伝えする靴磨き教室も開催しています。
大切な一足と長く付き合うお手伝いができれば幸いです!
