革靴ブランド事典Leather Shoes Brand
ベンチメイド/BENCH MADE(日本)
ベンチメイドのオーナーはジョンロブが認めた日本人
ベンチメイド(Bench Made)は日本のビスポークシューズメーカーです。立ち上げたのは大川バセット由紀子氏。「ジョンロブ(John Lobb)ロンドン」で働いていた経歴を持つ、日本を代表する靴職人です。
ベンチメイドの意味
ブランド名である「ベンチメイド」という言葉は、靴作りにおいてだけでなく、職人が何かを作る際に用いられる専門用語です。
ベンチメイドとは簡単に言えば「手作り」のことを指します。では「ハンドメイド」と同じなのかと言うと、まったく異なるものです。
より正確には、職人がその作業のすべてを請け負うことを「ベンチメイド」と言います。
つまり靴業界における用語「ベンチメイド」が示す意味は、採寸から仕上げの一から十までを、たった一人の職人が手作業で行うことなのです。
この名を冠したブランド、ベンチメイドでは、創業者である大川バセット由紀子氏がその役割を担っています。
ベンチメイドで作られる靴の魅力を列挙することは簡単なので、ここでは大川氏の経歴を紹介したいと思います。
彼女のキャリア、そして靴作りに対する信条が、そのままシューズメーカー「ベンチメイド」の魅力になるからです。
ベンチメイドの創業者、大川バセット由紀子の哲学
「お客様が納得するまで仮縫いをする」とは大川氏の言葉です。
彼女は、「履いてもらう人に最も適した快適な靴作り」を信条としています。
幼い頃から靴磨きが好きだったという彼女は、周囲の反対を押し切り、単身、イギリスに渡りました。
イギリスを代表する靴の学校、コードウェイナーズ・カレッジ(Cordwainers College)で靴作りを学び、在学中には非常に権威のあるヤング・デザイナー・オブ・ジ・イヤーに入賞しました。過去にこの賞を受けた人物には、ジミー・チュウ(JIMMY CHOO)やエマ・ホープ(EMMA HOPE)など、現在世界で展開されているブランドの創業者たちがいます。
卒業後、イギリスの老舗ブランド「ジョンロブ」に入社します。大川氏は日本人で初めてジョンロブの正社員となった人物です。
裁断、型紙、アッパー(靴の甲の革)を作る職人として仕事をこなすだけでなく、若手の育成にまで携わっていました。
8年もの間ジョンロブで仕事をしていた彼女ですが、エリザベス女王の靴を作ったこともありました。
本場イギリスの、キング・オブ・シューズとまで呼ばれたジョンロブで積んだ経験は、彼女の一生の財産になっただけでなく、靴に対する探究心を、より強固なものにしたようです。
大川氏はジョンロブを退社し、日本で靴教室を開きました。
ジョンロブでは徒弟制で作業を進めるため、上下関係が大切にされています。しかし彼女は、横の繋がりを重視しました。意見をぶつけ合うことで化学反応が生じることを知っていた彼女は、靴作りに新たな可能性を見出そうとしたのです。
そしてついに「ベンチメイド」を立ち上げます。
老舗ビスポークブランドで培ったノウハウが遺憾なく発揮されていることは言うまでもないのですが、彼女は何より、靴を注文してくれるお客様を大切にしています。
ベンチメイドは足にも人にも優しい、温もりのあるブランドです。
ベンチメイドの歴史
2006年、東京都でシューズメーカー「ベンチメイド」が誕生。創業者は「ジョンロブ」で技術を磨いた大川バセット由紀子氏。
2011年、レディースシューズメーカー「アコースティックシューズ(acoustic shoes)」を設立。