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The best way to cheer yourself up is to try to cheer somebody else up.

2010.12.10|その他の話

 田中です。
 たまには真面目な話もします。

 

 先日シューメイカーの同胞のブログ記事に「幸せって何かね?」とのつぶやきを見た。

 なんでも初対面の方に
 「好きなことが出来てるって、幸せじゃないですか」
 というようなことを言われ
 「好きな事をやるために多くの事を我慢し失った」
 と返したそうだ。

 私も似たようなことがよくある。

 その中でもいちばん覚えているのは、数年前の友人の結婚式の2次会でのことだ。
 初対面の若い男性、アパレルの仕事をされているという方だった。
 氏 「靴って1足作るのにどれくらい時間かかるんですか?」
 私 「内容によりますけど、今だと受注から納品まで半年くらいですね」
 それに対し
 氏 「スローライフでいいですね~」

 ふざけるな。

 その半年の間にいったいいくつの案件を同時にこなしていると思っているんだ。
 それも、症状も要望もまったく異なるものをまったく異なる進行状況で、だ。

 例えば、ソールを縫い付ける「出し縫い」の工程について説明しよう。
 前日に水に漬けておいた底革を早朝に本体に仮止め、そこから形を整え、隠し縫うための「チャネル」を起こし溝を掘り、縫うための糸を作り、低い椅子に座って靴を抱えて腰を丸めて縫う。
 2.5センチに10~14個ほどの縫い目を、固い底材に一つ一つ穴を空けながら、縫い目が変わらないように同じリズムで一定のスピードで姿勢を崩さず、片足40~60分ほどで縫い上げる。
 縫い終えて、一度起こした「チャネル」を伏せる。
 両足の作業を終えるまでには時間との闘いだ。
 水で濡らした底革が乾燥してしまったら、固くてもう縫えないからである。
 また、極限までの集中が必要なため出来れば午前中には終わらせたい。

 午前中にその作業が終われば、午後は違う案件のミシンをかける。
 そして夜になれば大きな音の出にくい型紙や木型の作製だ。
 深夜に眠りにつくまで翌日の作業のことやデザイン、マーケティングや販促のことなどに追われる。
 当然のことながら定休日などないし、意識のある間は常に頭の中は靴のことに追われるのだ。

 それに「好きなことを仕事にする」ということイコール「好きなことだけしてれば良い」ということではない。
 むしろ「好きなこと」をしているはずなのに「やりたくないこと、納得いかないこともしなければならない」という葛藤に悩まされ続ける。
 精神的にはこれが一番辛い。

 そしてそのうち「好きなこと」が「好きではなくなる」のだ。

 以前にある方が
 「靴作りを好きでなくならないためにはどうしたら良いか、それを考える毎日」
 と言われていたがまさにその通りである。
 それが出来ずにこの世界から去っていく人を10年以上見続けてきた。

 以前に雑誌の取材の時にも答えたのだが、
 「好きだけで出来るほど、簡単な仕事ではない」
 と思う。

 というよりも、どんなことでも
 「好きだけで出来るほど、世界は簡単ではない」
 と言った方が正しいかもしれない。

 それに「手に職があれば安心」などといった甘い考えが通用する時代でもない。

 幸いにも私は「靴が好き」ではなく
 「人が好き」「喜んでもらうのが好き」「好きなことを見つけるのが好き」
 といった単純な人間だから今日まで続けていられるのだと思う。

 それと、未熟な自分を支えてくれる先達や同僚、同胞、友人たちのおかげだと感謝している。
 ありがとう

 

ある大切な友人にこの言葉を贈りたい。

 『自分を励ます最上の方法。それは誰かを励まそうと努力することだ。』

 ※Mark Twain(1835~1910)、「トム・ソーヤーの冒険」の作者として知られる

 

靴修理と靴磨き バッグクリーニング Spica
ショップマネージャー 田中美孝

コメント(2)

このブログ記事のコメント

シンジ|2010.12.10 09:48
田中さんいつも興味深くブログ拝見しております。
また、多くの知識に頭が下がるばかりです。
私のブログは8割は愚痴みたいな感じになっていますが・・・・今後とも広い心で見てあげてください。。
決して酒癖は悪くないので、是非また飲み会誘ってね(笑)
たなか|2010.12.10 21:21
シンジ 様
恐縮です。 今回はシューメイカー全員が抱えているであろう「想い」について、ツイートしてみました。 お互い負けないで頑張りましょう!

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