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革靴の手入れを始めると、必ず出てくるのがシューキーパーです。
シューツリーとも呼ばれます。靴の中に入れて形を保つ道具ですが、値段は数百円から一万円を超えるものまで幅があり、素材も木製、プラスチック、金属とさまざまです。

そして多くの方が、こう思われます。「これは本当に必要なのだろうか?」と。
結論からお伝えすると、革靴を長く履くつもりなら「必要です!」。ただし、どんなものでもよいわけではありません。むしろ、サイズの合わないものを使うくらいなら、入れないほうがましという場合すらあります。

この記事では、シューキーパーが何をする道具なのかという原理から、素材の違い、使い方、選び方までを整理します。

この記事でわかること
  • シューキーパーの二つの役割
  • 素材別の違いと向き不向き
  • サイズ選びを誤った場合に起きること
  • 入れるタイミングと、入れっぱなしの是非
  • すでに型崩れした靴に対してできること

シューキーパーは何をする道具なのか?

シューキーパーを靴に入れる様子
役割は大きく二つあります。この二つを分けて理解すると、選び方が見えてきます。

役割①|形を保つ

革靴は一日履くと、足の動きに合わせて形が変わります。
甲は屈曲し、履きジワが刻まれ、かかとは足の出し入れで押されます。
脱いだあと、その形のまま放置すると、革は変形した状態で乾き、その形が定着していきます。
シューキーパーは内側から靴を押し広げ、本来の形に戻した状態で乾かすための道具です。

役割②|湿気を吸う

もう一つ、こちらも同じくらい重要です。
一日履いた靴の中には足から出た汗の湿気がこもっています。
この湿気が抜けないまま翌日また履くと、革は湿った状態が続き、劣化が早まります。カビやにおいの原因にもなります。
木製のシューキーパーはこの湿気を吸い取ってくれます。これは、プラスチック製にはできない仕事です。

二つの役割は、素材選びに直結する

形を保つだけなら、プラスチックでも金属でも構いません。しかし、湿気も吸わせたいなら、木製である必要があります。
この違いが、価格差の理由でもあります。

使わないと、靴はどうなるか

甲が波打った状態の革靴
シューキーパーを使わない場合に何が起きるか
を、修理でお預かりする靴によく見られる状態から整理します。

①甲が波打つ

履きジワが深く固定され、甲全体が波打ったような形になります。一度こうなると、伸ばしても完全には戻りません。
そして、深く折り込まれたシワの谷は、クリームが届きにくく、油分不足からひび割れの起点になります。

②かかとが内側に倒れる

かかとには形を保つための芯材が入っていますが、湿気を吸って柔らかくなった状態で放置されると、芯材ごと変形します。
かかとが倒れると、足のホールドが効かなくなり、歩くたびに足が靴の中で動くようになります。これは履き心地の低下だけでなく、内側の摩耗を早めます。

③つま先が反り上がる

履いているうちに、つま先はわずかに反り上がります。これ自体は自然なことですが、放置すると反りが強くなり、見た目の印象が変わります。

④湿気がこもり、カビとにおいが出る

形の問題だけでなく、衛生面の問題も出ます。特に夏を越した靴は、内部に汗の湿気を抱えています。


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修理でお預かりする靴を見ていると、シューキーパーを使ってこられたかどうかは、かなりはっきり分かります。同じ年数を履いていても、形の残り方が違います。

素材別の違い|木製・プラスチック・金属

木製・プラスチック・金属のシューキーパーを並べた様子

素材 除湿 形の保持 重さ・価格 向いている用途
木製(シダー等) 優れる 優れる 重い・高め 普段よく履く革靴。長期保管
木製(ブナ・その他) ややあり 優れる 重い・中程度 普段履き。シダーより安価
プラスチック なし 普通 軽い・安い 旅行用。低頻度で履く靴
金属(バネ式) なし やや弱い 軽い・安い 簡易的な型崩れ防止

木製|普段履きの革靴には、これが基本

除湿と形の保持、両方をこなせるのは木製だけです。革靴を大切に履くつもりなら、よく履く靴には木製をおすすめします。
欠点は、重いことと、価格が高いことです。旅行に持っていくには不向きです。

プラスチック|旅行用・低頻度の靴に

軽く、安く、割れにくい。旅行に持っていくならこちらです。
ただし、湿気は吸いません。むしろ湿気を閉じ込める方向に働くこともあるため、汗を吸った直後の靴に入れっぱなしにするのは避けてください。

金属(バネ式)|補助的な位置づけ

かかととつま先を突っ張って形を保つタイプです。安価で場所を取りませんが、面で押さえるわけではないため、形の保持力は限定的です。
また、突っ張る力が強すぎるものは、かかとや甲を局所的に押し広げてしまうことがあります。

木製の中でも、シダーが選ばれる理由

木製のシューキーパーを革靴に入れている様子
木製シューキーパーの多くは、シダー(杉・ヒノキ科の針葉樹)で作られています。理由があります。

理由①|吸湿性が高い

シダーは木材のなかでも湿気を吸う力に優れています。一日履いた靴の湿気を、しっかり吸い取ってくれます。

理由②|香りに防虫・防臭の働きがある

シダー独特の香りには、においを抑える働きと、虫を寄せつけにくくする働きがあるとされています。
靴箱を開けたときの、あの木の香り。あれは機能でもあります。

理由③|軽くて加工しやすい

針葉樹のため、広葉樹より軽く、靴の形に合わせた加工がしやすい。実用面での利点です。

無塗装であることが大切

木製を選ぶ際、表面が塗装されていないもの(無垢・無塗装)を選んでください。
塗装されていると、木の吸湿性が損なわれます。せっかくの木製の利点が半減してしまいます。

香りが弱くなったら

使い続けると、シダーの香りは弱くなります。これは吸湿性が落ちたサインでもあります。
表面を細かい紙やすりで軽く削ると、新しい面が出て、香りと吸湿性が戻ります。買い替えなくても、長く使い続けられます。

▸ [工房でお取り扱いしているもの] シューキーパー・保管まわりのもの

元麻布スピカではシューケア用品のほか、日々の保管に使う道具もお取り扱いしています。取り扱い状況は時期により変わりますので、商品ページをご覧ください。
どれを選べばよいか迷われる場合は実物をお持ちになってごらいお履きの靴のサイズと種類をお知らせいただければ、合うものをご案内します。


▶ 商品一覧(メンテナンス商品):https://www.spica-inc.jp/item/maintenance/
▶ Collonil(コロニル)アロマティックシーダーシュートゥリー(メンズ/レディース):https://www.spica-inc.jp/item/p14427/

サイズが合わないと、注意が必要です!

サイズが合わない物を選んでしまう危険性については最も重要なポイントなのでご説明します。

大きすぎる場合|靴を押し広げてしまう

シューキーパーは靴の内側から圧をかける道具です。サイズが大きすぎると、その圧が過剰になります。

  • かかとが押し広げられ、履いたときに緩くなる
  • 甲が伸ばされ、フィット感が失われる
  • 縫い目に負担がかかり、糸が切れることがある

革は伸びますが、縮みません。押し広げてしまった靴を元に戻すことは基本的にできません。

小さすぎる場合|効果がない

小さすぎるとそもそも形を保つ役割を果たしません。かかとに届かず、甲も押さえられない。ただ靴の中に木が入っているだけの状態になります。
害にはなりませんが意味もありません。

選び方の目安

シューキーパーには靴のサイズに対応した表示があります。基本はお履きの靴のサイズに合わせてください。
入れたときに、かかとと甲に軽く当たり、無理な力を入れなくても収まる。
これが適正サイズです。押し込まないと入らない、入れたあと靴の形が明らかに変わっている、という場合は大きすぎます。

安価なものを選ぶ際の注意

価格の安いシューキーパーにはサイズ展開が粗いものがあります。「25.0〜26.0cm対応」といった幅のある表示のものです。
こうしたものは幅の下限に近いサイズの靴に使うと、大きすぎることになります。安さだけで選ぶと、かえって靴を傷めることがあります。

入れるタイミングと入れっぱなしの是非

玄関でシューキーパーを入れる様子

いつ入れるのがよいか

理想は脱いだ直後ではなく、表面の湿気が少し飛んだ頃です。
脱いだ直後の靴は内部が汗で湿っています。この状態ですぐ木製のシューキーパーを入れると、木が湿気を吸いすぎて、乾くのに時間がかかります。

三十分から一時間ほど、風通しのよいところに置いてから入れる。これが理想です。
ただ、現実にはそこまで手をかけられないこともあります。その場合は脱いだらすぐ入れて構いません。入れないよりはるかにましです。

入れっぱなしでよいのか

結論としては入れっぱなしで問題ありません。むしろ、それが基本です。
靴を履いていない期間は常に形を保った状態にしておくほうが良いからです。
ただし、二点だけ注意があります。

  1. 木製の場合、時々取り出して、木自体を乾かしてください。湿気を吸い続けた木は、それ以上吸えなくなります。
  2. 長期保管の場合も、時々靴の状態を確認してください。カビが出ていないか、形に問題がないか?はとても重要なポイントになります。

濡れた靴の場合

雨で濡れた靴には、まず新聞紙を詰めて水分を吸わせるのが先です。シューキーパーを入れるタイミングは完全に乾いてから、シューキーパーに切り替えてください。
びしょ濡れの状態で木製を入れると、木が水分を吸いすぎて膨らみ、抜けなくなることもあります。

何本必要か|現実的な揃え方

複数の革靴とシューキーパーが並ぶ靴棚
「靴の数だけ必要ですか」というご質問をよくいただきます。

理想は靴の数だけ

常に形を保った状態にしておくのが理想ですから、靴の数だけあるのが理想です。

現実的には、よく履く靴から

ただ、革靴を何足も持っている方が、いきなり全部そろえるのは負担が大きいと思います。
優先順位をつけるなら、こうなります。

  1. 毎日〜週に数回履く靴(湿気を最も吸うため)
  2. 長期保管する靴(形が固定されると戻らないため)
  3. たまにしか履かない靴

まずは①から。一足ぶんずつ増やしていけば十分です。

使い回すという方法

靴の数より少ないシューキーパーを使い回すという方法もあります。
この場合、履いた直後の靴に優先的に入れてください。湿気が抜けきったあとの靴からは、外して構いません。ローテーションの考え方と組み合わせると、少ない本数でも運用できます。


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すでに型崩れしている靴について

ここまで予防の話をしてきましたが、すでに形が崩れてしまった靴をお持ちの方もいらっしゃると思います。

軽度なら、シューキーパーで戻ることもあります

甲の波打ちや、わずかな反りであれば、シューキーパーを入れて時間をかけることで、ある程度戻ることがあります。
ただし、革がすでに硬化している場合は先に油分を補ってから入れるほうが効果的です。硬い革を無理に押し広げると、割れることがあります。

かかとが倒れている場合

かかとの芯材が変形している場合、シューキーパーだけでは戻りません。芯材の交換や、かかと周りの再構築という修理の領域になります。
これは分解を伴う作業になりますので、工房でお預かりすることになります。

判断が難しい場合

「自分で戻るのか、修理が必要なのか」は、実物を見ないと判断が難しいところです。

▸形が気になる一足がありましたら

元麻布スピカでは公式LINEにお写真をお送りいただければ、状態についてご相談いただけます。靴を横から見た全体と、かかとを後ろから見た写真があると判断しやすくなります。
シューキーパーと時間で戻る範囲であれば、その方法をお伝えします。修理が必要な場合のみ、その旨をご案内します。


▶ LINEでのご相談はこちら:https://line.me/R/ti/p/@077xtoek
▶ 修理・メンテナンスサービス:https://www.spica-inc.jp/repair-service/category/mens/mens-repair/
▶ 修理事例:https://www.spica-inc.jp/repair-case/

よくあるご質問

Q. 百円均一のシューキーパーでも効果はありますか

A. 形を保つという点ではないよりはあったほうがよいです。ただし、素材がプラスチックであれば除湿の効果はなく、サイズ展開が粗い場合は靴を押し広げる恐れがあります。よく履く靴にはサイズの合った木製をおすすめします。

Q. シューキーパーを入れると、革が伸びませんか

A. 適正なサイズであれば、伸びません。伸びるのは大きすぎるものを無理に押し込んだ場合です。入れたときに靴の形が変わってしまうものは大きすぎます。

Q. スニーカーにも必要ですか

A. 革靴ほどではありません。ただし、革製のスニーカーであれば、形の保持と除湿の意味で効果があります。

Q. シューキーパーの手入れは必要ですか

A. 木製の場合、時々取り出して乾かしてください。香りが弱くなったら、細かい紙やすりで表面を軽く削ると回復します。

Q. 左右の区別はありますか

A. 多くの木製シューキーパーには左右があります。逆に入れると形が合わず、かえって靴を歪めることがありますので、確認してお使いください。

Q. ブーツにも同じものが使えますか

A. 足首から上の部分を支える機構がないため、通常のシューキーパーでは筒の部分の型崩れを防げません。ブーツ用のものを選んでください。

まとめ|シューキーパーは型崩れと湿気を防ぐ必須道具

革靴を長く綺麗に履くためにシューキーパーは必須であり、「形の保持」と「除湿」という2つの大きな役割を担います。
吸湿・防臭性に優れた無塗装の木製(シダー)が基本ですが、大きすぎるサイズは革を押し広げて傷めるため注意が必要です。
脱いで少し置いた後に入れ、履かない間は入れっぱなしにして大切な靴を守りましょう。

この記事のポイント

  • 役割は「形を保つ」と「湿気を吸う」の二つ
  • 除湿まで求めるなら木製。旅行用ならプラスチック
  • シダーは吸湿・防臭に優れ、無塗装のものを選ぶ
  • サイズの合わないものは、入れないより害になる
  • 入れっぱなしでよいが、木は時々乾かす
  • まずはよく履く靴の分から揃えれば十分

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