朝晩に涼しさを感じるようになると、そろそろ衣替えの時期です。
クローゼットの入れ替えをする方は多いと思いますが、そのとき靴箱まで開ける方は意外と少ないのではないでしょうか。
けれど、革靴にとってこの時期は一年でも重要な節目です。
夏のあいだ、革靴は二通りの過ごし方をしています。
汗を吸いながら履き続けたのか?あるいは靴箱の奥でしまわれたままか?どちらであっても、そのままの状態で秋冬に突入するのはあまりおすすめできません。
この記事では秋に一度だけやっておきたい革靴の総点検を、チェックリストの形でご紹介します。所要時間は一足あたり十分程度です。
- 夏を越した革靴に何が起きているか
- 秋に確認すべき10項目
- 自分で対処できることと、依頼すべきことの仕分け
- 修理に出すなら秋がよい理由
夏を越した革靴に、何が起きているか

まず、なぜ秋に点検が必要なのかを整理します。
履き続けた靴の場合|汗の蓄積
夏に履かれた革靴は大量の汗を吸っています。汗には塩分が含まれており、これが革の内部に残ります。
塩分が残った革は乾く過程で硬くなります。
硬くなった革はしなやかさを失い、屈曲に弱くなる。ひび割れの下地ができている状態です。
また、内側のライニングやインソールは汗と皮脂を吸って傷んでいることが多くあります。
しまわれていた靴の場合|湿気とカビ
一方、夏のあいだ履かれずにしまわれていた靴には別の問題があります。
日本の夏は高温多湿です。靴箱の中は風が通りにくく、湿気がこもります。
この環境で数か月置かれた靴にはカビが出ていることが少なくありません。
それ以外にも、シューキーパーを入れずにしまっていた場合、形が崩れている可能性もあります。
これから、革靴の出番が増える
そして重要なのがこれから秋冬にかけて、革靴を履く機会が増えるということです。
夏に弱った状態のまま使用頻度が上がる。ここで一度整えておくかどうかが、その後の数か月を分けます。
点検の前に|準備するもの

特別なものは要りません。普段のケアに使うもので足ります。
- 馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)
- 乾いた柔らかい布
- クリーナー(レザーローション等)
- 靴クリーム
- シューキーパー
- 明るい照明(できれば自然光)
加えて、点検の結果をメモできるものがあると便利です。 「革靴はメンテナンスが必須!」と聞くけど、いざ革靴を買ったら何から手をつけていいのかわからない…、という方も多いと思います。
そこで本記事では、具体的にどう革靴をメンテナンスしていけばいいのか?を革靴職人が徹底解説していきます!
この記事を読めば、こんな悩みが解決します!
そもそも「
「この靴はソールが薄い」「こちらは内側が破れている」といった記録があると、あとで修理に出すかどうかの判断がしやすくなります。
なお、基本のケア手順については既存の記事で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
初めての革靴、正しくメンテナンスできてる?革靴職人が手入れ方法を詳しく解説!
外側のチェック|4項目

① 革が硬くなっていないか
甲の部分を指で軽く押してみてください。しなやかにたわむなら問題ありません。
硬く、押しても動かない、あるいはパキッとした感触があるなら、油分が抜けています。クリームで油分を補ってください。
② ひび割れが出ていないか
履きジワの部分を、明るい場所でよく見てください。細い白い線が入っていないか。 ある日、革靴の甲を見て、細い線が入っていることに気づいたことはありませんか?
最初は汚れかと思って拭いてみるけれど、取れない。よく見ると、履きジワに沿って、細かいひびが走っている。
これは革靴を長く履いている方の多くが、一度は経験することです。
先にお伝えしておくと、いったん割れてしまった
この段階で見つかれば、油分の補給で進行を止められます。深い溝になっている場合は、修理を検討する段階です。
革靴のひび割れは、なぜ起きるのか?予防と、割れてしまったあとにできること
③ カビが出ていないか
特に、しまいっぱなしだった靴は要注意です。白い粉のようなもの、緑がかった斑点がないか確認してください。 長く履き続けたい革靴、普段どのように保管をしていますか? シューズボックスに入れたまんま、という人が多いかもしれませんが、革靴は湿気や乾燥によって革の状態が悪くなってしまうので、ぜひ保管方法にも意識を向けたいところ。そこで本記事では、革靴の正しい保管方法についてご紹介いたします。
やり
表面に白く浮いている程度なら、乾いた布で払い、乾燥させることで対処できます。革の内部まで及んでいる場合は、専門の処置が必要です。
あなたの革靴は大丈夫!? 革靴の正しい保管方法6
④ 色あせ・白化がないかこれから、革靴の出番が増える
つま先、かかと、コバのきわ。摩擦を受ける部分の色が抜けていないか確認してください。 靴のお手入れを始めようとして、最初につまずくのが、クリームの色ではないでしょうか。
店頭に並ぶ靴クリームは無色から、黒、こげ茶、明るい茶、赤みの強いもの、青みがかったものまで、驚くほどの色数があります。ものによっては四十色以上を展開しているシリーズもあります。
そこで多くの方がこう考えます。
部分的な色あせなら、色付きクリームで補色できます。
靴クリームの色は何を選べばいい? 黒・茶・無色の使い分けと、色を入れるという考え方
内側のチェック|3項目

甲の部分を指で軽く押してみてください。しなやかにたわむなら問題ありません。
硬く、押しても動かない、あるいはパキッとした感触があるなら、油分が抜けています。クリームで油分を補ってください。
⑤ かかとの内側が破れていないか
かかとの内側の革(カウンターライニング)が擦れて、破れていないか。芯材が見えていないか。
夏は薄手の靴下や素足に近い状態で履くことが増えるため、この部分の摩耗が進みやすくなります。
破れている場合、放置すると芯材まで傷み、かかとの形が崩れます。早い段階なら軽い修理で済みます。
⑥ インソール(敷き革)の状態
汗を吸って変色していないか。硬くなっていないか。においが残っていないか。
インソールは交換できる部材です。ここが気になるだけで靴を履かなくなるのはもったいないことです。
⑦ においが残っていないか
靴の中のにおいは雑菌が汗や皮脂を分解して生じます。夏を越した靴には程度の差はあれ蓄積があります。 会議で靴を脱ぐシーン、足の臭いが気になって冷や汗をかいた経験はありませんか。
革靴を履いていると足が蒸れて、どうしても不快ですよね。実は、革靴の蒸れには明確な原因があり、正しく対策すれば確実に改善できます。
本記事では、これまでさまざまな革靴と向き合ってきたプロが、蒸れる原因から効果的な対策まで
乾燥と除菌で改善することが多いですが、内部まで染み込んでいる場合は内側のクリーニングという選択肢があります。
革靴蒸れは“履き方”が問題⁉︎靴職人が教える蒸れない・臭わないケア方法!
ソールまわりのチェック|3項目

靴を裏返して確認します。
⑧ ソールの減り具合
指でソールの中央を押してみてください。たわむ感触があれば残りが薄くなっています。
また、ソール側面を走る縫い目の糸が擦れて切れ始めていないか。ここが切れていれば交換の時期です。
⑨ ヒール(かかとの底)の減り
かかとの外側が斜めに減っていないか。ゴムの部分が減って、その上の層が見えていないか。
ヒールは減りすぎると土台まで削れ、修理範囲が広がります。早めの交換が経済的です。
⑩ コバとつま先の状態
ソールの側面(コバ)が削れて輪郭が崩れていないか。つま先が斜めに削れて、縫い目に近づいていないか。
つま先の削れが早い方は、補強を入れておくと次までの寿命が延びます。
秋に確認すべき10項目まとめ
| チェック項目 | 自分ができる | 修理の領域 |
|---|---|---|
| 革の硬化 | クリームで油分補給 | ― |
| 浅いひび割れ | 油分補給+補色 | 深い割れは補修 |
| カビ(表面) | 乾拭き+乾燥 | 内部まで及ぶ場合 |
| 色あせ | 色付きクリーム | 広範囲なら染め直し |
| かかと内側の破れ | ― | 当て革・ライニング交換 |
| インソールの劣化 | ― | 交換 |
| におい | 乾燥・除菌 | 内部クリーニング |
| ソールの摩耗 | ― | オールソール交換 |
| ヒールの減り | ― | トップリフト交換 |
| つま先の削れ | ― | 補強・修理 |
点検のあとにやること

点検が終わったら、その場でできることを済ませてしまいましょう。
手順①|ブラッシングとクリーニング
馬毛ブラシでホコリを落とし、クリーナーで古いクリームと汚れを取ります。しまっていた靴はホコリをかぶっていることが多いので、ここは丁寧に。
手順②|油分を補う
夏に硬くなった革には油分の補給が必要です。シューキーパーを入れて履きジワを伸ばした状態で、クリームを薄く塗り広げてください。
硬化が進んでいる場合は一度で終わらせず、数日かけて薄く重ねるほうが確実です。
手順③|必要なら補色
色あせが気になる部分には色付きクリームで補色します。
手順④|内部を乾燥させる
しまっていた靴も履いていた靴も、一度風を通してください。半日から一日、風通しのよい日陰に置くだけで内部の湿気が抜けます。
手順⑤|修理が必要なものを仕分ける
点検で見つかった、自分では対処できない項目。これをメモにまとめておいてください。
複数の靴をまとめて確認しておくと、修理に出す順番も決めやすくなります。
▸ [工房でお取り扱いしているもの] 点検のあとのケアに
夏を越した革にはまず汚れを落としてから油分を入れるという順序が効きます。硬くなっている場合は、保湿に寄ったクリームから始めると受け入れがよくなります。
元麻布スピカではコロンブス社の最上級ライン「BOOT BLACK(ブートブラック)」の各アイテムをお取り扱いしています。
何を使えばよいか迷われる場合は、靴をお持ちいただければ状態を見てご案内します。
▶ 商品一覧(メンテナンス商品):https://www.spica-inc.jp/item/maintenance/
▶ BOOT BLACK コードバン専用クリーム:https://www.spica-inc.jp/item/p14413/
秋のうちに修理へ出すと良い理由

点検で修理が必要と分かった場合、秋に出すことをおすすめしています。理由が三つあります。
理由①|冬本番に間に合う
ソール交換のような工程は靴を分解して組み直すため、それなりの日数がかかります。その間、その靴は履けません。
秋のうちに出しておけば、革靴の出番がもっとも増える冬には手元に戻っています。
理由②|まだ他の靴で回せる
秋はまだ暑い日もあり、履物の選択肢に幅があります。一足預けても、日常が回りやすい時期です。
理由③|繁忙期を避けられる
修理のご依頼は革靴の出番が増える冬に向けて増えていきます。時間に余裕をもってお預けになりたい場合、早い時期のほうが落ち着いて進められます。
まとめて出すという方法
複数の靴を点検した結果、いくつか修理が必要になった場合、一度に全部出すのではなく、優先順位をつけて順に出すという方法もあります。
どの靴から手を入れるべきか迷われる場合もご相談いただければ、状態を見て順番をご提案します。
▶ 修理事例(靴修理・革小物修理・バッグ修理):https://www.spica-inc.jp/repair-case/
▸ 点検で気になる箇所が見つかったら
元麻布スピカでは公式LINEにお写真をお送りいただければ、靴の状態についてご相談いただけます。気になる箇所の写真と、ソール裏の写真があると判断しやすくなります。
ご自身のケアで足りる範囲であれば、そのようにお伝えします。急いでお預かりすることはありません。
▶ LINEでのご相談はこちら:https://line.me/R/ti/p/@077xtoek
▶ 修理・メンテナンスサービス(紳士靴):https://www.spica-inc.jp/repair-service/category/mens/mens-repair/
▶ 元麻布スピカの「履きやすさ」:https://www.spica-inc.jp/shop/
秋冬に向けた、ひと足先の準備
点検のついでに、これから使うものも確認しておくと、あとが楽になります。
ブーツを出しておく
秋冬に履くブーツは去年の春からしまわれたままのはずです。革靴と同じく、カビと硬化の確認をしておいてください。 大切なブーツと長く付き合っていく方法とは?
そろそろ暖かくなってきたし、ブーツをしまって玄関をスッキリさせたい。
そうお考えの皆さん、「ブラシやクリームなどお手入れ道具の使い方がわからない」「久々にシューズボックスから出したらカビが生えてしまっていた……」など、ブーツの取り扱いについて頭を悩ま
ブーツは筒の部分が倒れて型崩れしやすく、また修理が必要な場合は日数もかかります。履きたくなってから慌てるより、今のうちに確認しておくほうが確実です。
靴のプロがおすすめする、大切なブーツの正しいメンテナンス方法
防水スプレーをかけ直す
秋は雨の多い季節でもあります。防水スプレーの効果は時間とともに薄れますので、シーズンの入りにかけ直しておくと安心です。
かけたあとは一晩置いてから履いてください。直後は膜が定着していません。
🛒 防水スプレーはスピカECサイトでも販売しております。
Collonil(コロニル)スエード+ヌバックスプレー(起毛皮革用栄養、防水スプレー)
コロニル 1909 シュプリームプロテクトスプレー
夏に履いた靴を、しまう準備をする
サンダルや夏に活躍した靴をしまう場合も、汚れを落として乾かしてからにしてください。汚れを残したまましまうと、それがカビの栄養になります。 下駄箱にしまった革靴、翌シーズンに取り出してみたらカビだらけ。
実は、こんな経験をした人は少なくありません。
調査によると、収納スペースの湿気やカビに不安を感じる人が96.3%にも上り、約32%が革製品のカビを特に懸念しています。
革靴の保管で大切なのは、「日常的に履く靴」と「シーズンオフの靴
革靴の正しい保管方法と長持ちさせるコツ|カビ・型崩れを防ぐプロの知識!
よくあるご質問
Q. 点検はどのくらいの頻度でやるべきですか
A. 本格的な点検は年に二回で十分です。春と秋、季節の変わり目に合わせるのが分かりやすいと思います。日常のブラッシングは、その都度行ってください。
Q. 何足も持っていて、全部やる時間がありません
A. まずは、これから秋冬によく履く予定の靴から始めてください。しまいっぱなしの靴はカビの確認だけでも先にしておくと安心です。
Q. 修理に出すべきか、まだ様子を見るべきか分かりません
A. 判断が難しい項目はソールの残りと、内側の傷みです。この二つは進行すると修理範囲が広がりますので、迷ったらご相談ください。
Q. 夏に履いていない靴も、油分の補給は必要ですか
A. 必要です。履いていなくても、時間の経過とともに油分は抜けていきます。しまわれていた靴のほうが、むしろ硬くなっていることが多いものです。
Q. 点検で見つかった問題を、全部直す必要がありますか
A. いいえ。急ぐものと、様子を見てよいものがあります。ソールの摩耗や内側の破れは進行しますが、色あせや軽い傷は急ぎません。優先順位をつけて構いません。
まとめ:秋の衣替え時に靴の10項目を点検し、冬本番へ備える
夏を越した革靴は汗の塩分による「革の硬化」や、湿気による「カビ・型崩れ」が起きているため、衣替え時の総点検が効果的です。
外側4項目・内側3項目・ソール3項目の計10項目で状態を切り分け、油分補給や乾燥でセルフケアを行いつつ、ソールの減りや破れは繁忙期前の秋のうちに修理へ出すのがおすすめです。
この記事のポイント
- 夏を越した靴には汗による硬化か、湿気とカビが残っている
- 点検は外側4・内側3・ソール3の計10項目
- 自分でできるのは汚れ落とし・油分補給・乾燥まで
- ソール、内側の破れ、型崩れは修理の領域
- 秋のうちに出せば、冬本番に間に合う
衣替えのついでに、靴箱もそっと見直してみませんか。たった10分の手間で、この冬のお出かけがもっと楽しみになりますよ。
