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夏の革靴は正直に言って、快適なものではありません。
革という素材は本来、保温性が高く、密閉性のある素材です。冬には足を温かく保ってくれる長所が、夏には「蒸れる」という短所として現れます。
けれど、革靴を毎日履く方にとって、夏だからといってスニーカーやサンダルに切り替えるわけにはいかない場面も多いはずです。
では、夏の革靴とどう付き合えばいいのか。
本記事では蒸れの仕組みを解き明かしたうえで、「涼しく履く」ための具体的な工夫を職人の視点でお伝えします。製法や素材による違いという、少し専門的な話にも踏み込みます。

この記事でわかること
  • 革靴が蒸れる物理的な仕組み

  • 製法による通気性の違い
  • 今ある革靴を涼しく履く工夫
  • 夏に向いた一足の選び方・作り方

なぜ革靴は蒸れるのか、その物理的な仕組み

上から見た革靴
蒸れ対策を考える前に、なぜ蒸れるのかを知っておきましょう。

足は一日にコップ一杯の汗をかく

足の裏には汗腺が密集しています。人間は一日に、両足でコップ一杯分(約200ml)もの汗をかくと言われています。
この汗が蒸発できれば問題ないのですが革靴の中は密閉性が高く、汗が逃げ場を失います。行き場を失った汗が湿気となって、靴の中にこもる。これが「蒸れ」の正体です。

革は通気しないわけではない、が追いつかない

革は天然素材なので、わずかに通気性があります。けれど、夏場の大量の汗を発散させるには、その通気性では到底追いつきません
さらに、革靴の底(ソール)が通気性のないゴム素材だと、湿気はほぼ完全に閉じ込められます。蒸れの大きな要因は、実はこのソールにあるのです。

製法によって、通気性は変わる

革靴を製作する職人
ここからは少し専門的な話になります。革靴の「製法」によって、通気性が変わるという話です。

レザーソールはゴムソールより通気性が高い

まず、ソールの素材です。
革底(レザーソール)ゴム底(ラバーソール)に比べて、はるかに通気性に優れています。革は天然素材なので、わずかながら湿気を通します。一方、ゴムは湿気をまったく通しません。
夏の蒸れが気になる方は、レザーソールの革靴をおすすめする理由のひとつがこの通気性です。

製法による違い

革靴の製法にはいくつかありますが、代表的な3つの通気性を比べてみます。

▸ グッドイヤーウェルト製法

アッパーとソールの間に「コルク」を敷き詰める製法です。このコルクが足の湿気を吸い取り、適度に発散させる働きをします。履き込むほど足になじみ、通気性の面でも優れています


▸ マッケイ製法

アッパーとソールを直接縫い合わせる製法。構造がシンプルで靴が軽く、屈曲性に優れます。ソールが薄いぶん、レザーソールであれば通気性も期待できます


▸ セメント製法

接着剤でソールを貼り付ける製法。安価な革靴に多く、ゴムソールと組み合わさることが多いため、通気性は最も劣ります

職人の知恵袋💡

私たちがオーダーで「夏も快適に履ける革靴を」とご相談を受けたときは、グッドイヤーウェルト製法レザーソール、という組み合わせをおすすめすることが多いです。コルクの吸湿性と革底の通気性、その両方が活きるからです。

今ある革靴を、涼しく履くための工夫

メッシュインソール、吸湿性の高い中敷きなどの夏向けアイテム
「製法を変える」と言っても、今持っている革靴をすぐに買い替えるわけにはいきません。手持ちの革靴を、少しでも涼しく履く工夫をご紹介します。

工夫①|通気性・吸湿性の高いインソールに替える

もっとも手軽で効果的なのが、インソール(中敷き)の交換です。
メッシュ素材や、コルク、本革のインソールは汗を吸い取り、足裏のベタつきを軽減します。夏用のインソールに替えるだけで、体感は大きく変わります。

工夫②|汗を吸う靴下を選ぶ

意外と見落とされがちですが、靴下の素材は蒸れに直結します。

  • 綿(コットン):吸湿性が高く、夏向き
  • 麻(リネン):通気性・吸湿性ともに優秀。夏の最適解のひとつ
  • ウール(メリノ):意外にも夏向き。吸湿・放湿性に優れ、ムレを軽減
  • 化学繊維100%:吸湿性が低く、蒸れやすい(スポーツ用の速乾タイプは別)

工夫③|一日の途中で、靴を脱いで休ませる

可能であれば昼休みなどに一度靴を脱ぎ、靴と足を乾かす時間を作ると午後の快適さが変わります。
デスクワークの方なら足元で靴を脱ぐだけでも、湿気がこもりにくくなります。

夏向けの革靴を選ぶ・作るという発想

夏向けの革靴
根本的に夏の快適さを求めるなら、「夏向けの一足」を持つという発想もあります。

夏に向いた革靴の特徴

  • レザーソール : 通気性が高い
  • 明るい色 : 黒は熱を吸収しやすい。ブラウンやベージュ系は涼しげ
  • メッシュレザー(編み込み) : 通気性を高めた革の加工
  • ローファーなど甲の開いたデザイン : 熱がこもりにくい
  • 非ライニング(裏地なし)構造 : 革一枚仕立てで通気性を確保

「夏の一足」を準備する

私たちの工房では、夏向けの一足としてローファーなどのデザインもご用意しております。
少し明るめのレザーを使ったり、ライニングを部分的に無くす仕様にしたり、レザーソールを選んだり。「夏でも快適に履ける、きちんとした革靴」を、足の形に合わせて作る。これは、既製品ではなかなか得られない快適さです。
夏のビジネスシーンでも足元の格を落としたくない、という方には、検討する価値のある選択肢です。

オーダーには種類があり、価格も幅広いコースをご用意しています。詳しくは、こちらの記事をご覧いただければと思います。

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関連ページ:『オーダーシューズについて -3つのオーダーコース-』

蒸れにくい履き方の、小さな習慣

革靴を玄関で陰干ししている様子
最後に、蒸れにくくする日々の小さな習慣をまとめます。ニオイ対策とも共通しますが、蒸れ対策の基本でもあります。

  1.  同じ革靴を連日履かず、2〜3足をローテーションする
  2.  脱いだらシューキーパーを入れ、湿気を吸わせる
  3. 帰宅後すぐに下駄箱にしまわず、風通しの良い場所で乾かす
  4. 夏用の吸湿インソールに替えておく
  5. 汗を吸う靴下(綿・麻・ウール)を選ぶ

どれも特別なことではありませんが積み重ねることで、夏の革靴の快適さは確実に変わります。

まとめ|夏の革靴は付き合い方次第

夏の革靴は確かに快適とは言いがたい季節です。けれど、蒸れの仕組みを理解し、製法・素材・履き方を工夫すれば、不快感はかなり軽減できます。
革という素材の特性を知り、上手に付き合っていく。それも革靴を長く愛用するための、ひとつの楽しみ方だと私たちは考えています。

この記事のポイント

  • 蒸れの正体は逃げ場を失った足の汗(一日コップ一杯)
  • レザーソール>ゴムソール。グッドイヤー製法は通気性に優れる
  • 今ある靴はインソール交換・靴下選び・途中で休ませるで対処
  • 根本的には夏向けの一足を選ぶ・作るのも有効

この夏も、足元から快適にお過ごしください。