スエードの革靴に、こんな印象をお持ちではないでしょうか。
「手入れが難しそう」「雨に弱そう」「秋冬のもの」──。
実はこれらはどれも、半分は誤解です。スエードの特製を正しく知れば、手入れはむしろシンプル。そして、夏にこそ映える素材でもあります。
起毛したマットな質感はツヤのあるスムースレザーよりも軽やかで、夏の装いによく合います。色の選択肢も豊かで、足元に季節感を添えるのに最適な素材です。
本記事では夏のスエード革靴の魅力と、その手入れ方法、そして履きこなしのコツを、職人の視点でお伝えします。スエードを敬遠していた方こそ、ぜひ読んでみてください。
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スエードが夏に向いている理由
- スムースレザーとは違う、スエード専用ケア
- 雨・汚れへの備えと対処
- 夏のスエードコーデの考え方
スエードとは何か、そしてなぜ夏に向くのか

まず、スエードがどんな革なのかを簡単にお話しします。
スエードは「革の裏面を起毛させた」革
スエードは革の内側(肉面)をやすりで起毛させて、細かい毛羽立ちを出した革です。子牛や山羊などの比較的小さな革から作られることが多く、起毛が細かく上品なのが特徴です。
似た革に「ヌバック」がありますが、こちらは革の表面(銀面)を起毛させたもの。スエードのほうが毛足が長く、柔らかい印象になります。
なぜスエードは夏に向くのか
スエードが夏に向く理由は主に2つあります。
▸ 理由①|見た目が軽やかで涼しげ
ツヤのあるスムースレザーはどっしりとした重厚感があります。
一方、スエードのマットで起毛した質感は光を反射せず、見た目に軽やか。夏の装いに、涼しげな印象を添えてくれます。
▸ 理由②|起毛による通気性
起毛した表面は平滑なスムースレザーよりも空気を含みやすく、通気性の面でもわずかに有利です。蒸し暑い夏に、少しでも足元を快適にしたい方に向いています。
職人の知恵袋💡
スエードは「秋冬の素材」と思われがちですが、明るい色のスエードは夏にこそ映えます。私たちも夏の足元の相談を受けたとき、スエードをおすすめすることがよくあります。
スエードのお手入れは、実はシンプル

「スエードは手入れが難しい」というのは最大の誤解です。むしろ、スムースレザーよりもシンプルだと言えます。
スムースレザーとの、根本的な違い
スムースレザーのケアは「クリームで栄養と艶を与える」ことが中心です。一方、スエードのケアは「起毛を整え、汚れを払う」ことが中心。クリームを塗る必要は基本的にありません。
つまり、スエードのケアは「ブラッシングが9割」なのです。
基本のお手入れ|ブラッシング
スエードの日常ケアは専用ブラシでのブラッシングです。
- 履いた後、スエード用ブラシ(ゴム製や真鍮製)で、全体を優しくブラッシング
- 毛並みを整えるように、一方向に動かす
- 汚れが気になる部分は少し強めにブラッシングして毛羽立ちを起こす
これだけで、スエードの風合いは保たれます。所要時間は1〜2分。スムースレザーのクリームケアよりずっと手軽です。
毛が寝てしまったら
履いているうちに、起毛が寝てペタッとしてくることがあります。そんなときは、ブラッシングで毛を起こしてあげると、元の風合いが戻ります。
頑固に寝てしまった場合はスエード用のスプレーを使ったり、固く絞った布で軽く湿らせてからブラッシングすると、毛が立ちやすくなります。
雨と汚れへの、正しい備え

「スエードは雨に弱い」というのも、半分は誤解です。正しく備えれば、雨もそれほど怖くありません。
最大の備えは「防水スプレー」
スエードのケアで唯一にして最大の備えが、防水スプレーです。
おろす前(履き始める前)にスエード用の防水スプレーをかけておくこと。これだけで、水も汚れも大幅に弾くようになります。スムースレザー以上にスエードでは防水スプレーが効果を発揮します。
- 履きおろす前に、必ず防水スプレーをかける
- スプレー後は一晩乾かしてから履く
- 効果は徐々に薄れるので、定期的にかけ直す
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濡れてしまったら
雨に濡れてしまった場合の対処はスムースレザーと基本は同じです。
- 乾いた布で、表面の水分を優しく押さえるように取る
- シューキーパーを入れ、風通しの良い日陰でゆっくり乾かす
- 完全に乾いたら、ブラッシングで毛を起こす
乾燥後にブラッシングすれば起毛が戻り、ほとんど元通りになります。これがスエードの強みでもあります。
汚れ・シミがついたら
軽い汚れはブラッシングで落ちます。落ちない汚れはスエード専用の消しゴム(クリーナー)で優しくこすります。
油ジミなど、家庭で落ちない汚れは無理にこすると広がってしまうため、プロにご相談ください。
夏のスエード革靴、履きこなしのヒント

夏にスエードを履きこなすための、スタイリングのヒントをお伝えします。
色は、明るめを選ぶと夏らしい
夏のスエードは明るい色がおすすめです。
- ベージュ・サンド系 : 夏の軽やかさにぴったり
- ライトブラウン : 汎用性が高く、夏のスラックスによく合う
- ネイビー : 落ち着きと爽やかさを両立
- グレー : 都会的で涼しげな印象
夏の素材と合わせる
スエードは夏の軽やかな素材と好相性です。
リネン(麻)のパンツやジャケット、コットンのスラックスなど、季節感のある素材と合わせると足元から夏らしさが完成します。
デザインで選ぶ
夏には甲の開いたローファーや軽快なダービーシューズのスエードが映えます。
重厚なストレートチップよりも、軽やかなデザインのほうが夏の装いに馴染みます。
スエードも、経年変化を楽しめる

スエードはスムースレザーとはまた違った経年変化を見せてくれる革です。
使い込むほど、独特の風合いに
スエードは履き込むうちに起毛が寝たり立ったりを繰り返し、独特の濃淡が生まれてきます。手やブラシが触れる部分と、そうでない部分で微妙な表情の違いが出てくる。これがスエードの経年変化の魅力です。
スムースレザーが「艶を増していく」変化だとすれば、スエードは「風合いに深みが出ていく」変化です。
ケアを続ければ、長く美しく
定期的なブラッシングと防水スプレーでのケアを続ければ、スエードも何年も美しく保てます。そして、ソールが減ればスムースレザーと同じように修理して履き続けられます。
スエードもまた、長く付き合える革なのです。
まとめ|食わず嫌いを、卒業してみませんか
スエードは「手入れが難しい」「雨に弱い」という先入観から、敬遠されがちな素材です。けれど、実際のケアはブラッシングが中心でシンプル。防水スプレーさえ習慣にすれば、雨もそれほど怖くありません。
そして何より、夏の軽やかな装いに、スエードはよく似合います。スムースレザーの一足に、夏はスエードを加えてみる。それだけで、足元の表情がぐっと豊かになります。
スエードの食わず嫌いを、この夏、卒業してみてはいかがでしょうか。
この記事のポイント
- スエードは起毛革。軽やかで通気性があり、実は夏向き
- ケアは「ブラッシングが9割」。クリームは基本不要
- 防水スプレーを習慣にすれば、雨も汚れも怖くない
- 夏は明るい色をリネンなど夏素材と合わせて
- スエードも経年変化と修理で長く付き合える
この夏の足元に、軽やかなスエードという選択を。
