投稿日:2026.06.29 最終更新日:2026.06.29
あなたの足は左右で違う。革靴サイズ選びで失敗しないために職人が話したいこと

「いつも、革靴のサイズで失敗するんです」
工房に初めていらっしゃるお客様の半分以上から聞く言葉です。
スニーカーは何の問題もない。でも、革靴だけはなぜか合わない。きつくて足が痛い、緩くて踵が抜ける、つま先が窮屈、甲が当たる──。何足買ってもぴったりという経験がない。
ご安心ください。それは決してあなたの足が「変わった足」だからではありません。
革靴のサイズという考え方が、実はスニーカーや運動靴とまったく違うルールで成り立っています。そのことをほとんどの方は教わる機会がないだけなのです。
本記事では革靴のサイズが「どんな仕組みで決まっているのか」を整理し、その上で失敗しない選び方をお伝えします。
読み終えていただくころには靴選びの目線が、少し変わっているはずです。
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革靴のサイズが「3つの軸」で決まっていること
- ほとんどの人に「左右差」があるという事実
- 革靴を傷める「やってはいけない5つのNG」
- 既製靴の試着で必ず確認すべき6つのポイント
- 既製では限界、と感じたときの次の一手
その前に──「あなたの足は左右で違う」という事実

最初にひとつ伝えておきたいことがあります。あなたの足は左右でほぼ確実に違います。
採寸の現場で見えてくること
私たち元麻布スピカはご来店いただいたお客様の足を、しっかりと時間をかけて採寸しています。なぜそんなに時間がかかるのか?と聞かれることがあります。
理由のひとつは左右両方の足を、別々に丁寧に測るからです。
職人の知恵袋💡
私たちが10年近く採寸を続けてきて確信していることがあります。「左右の足がぴったり同じサイズ」の方はほとんどお目にかかりません。差が小さい方も、5mm程度違う方も、ワイズが片足だけ広い方も、本当にさまざまです。
つまり、片足だけで靴を選んでいる時点ですでに半分の足には合っていない可能性が高いのです。
既製の革靴を試着するとき、必ず両足を履いてみてください。片足だけ立ち上がってサッと判断するのではなく、両足とも立った状態で何歩か歩いて確認する。これが、サイズ選びの最初の一歩です。
革靴のサイズを決めている3つの軸

革靴のサイズはひとつの数字では決まりません。少なくとも、3つの軸があります。
軸①|足長(そくちょう)
いちばん馴染みのある「25.0cm」「26.5cm」といった数字。かかとからつま先までの長さです。
ただし、これだけで靴のサイズが決まると思うのは革靴の世界では大きな誤解です。
軸②|足囲(そくい)/ワイズ
ワイズは足の親指の付け根(拇指球)と小指の付け根(小指球)をぐるりと一周測った長さです。日本のJIS規格では、E、EE、EEE、EEEEなどの記号で表されます。
身長が同じでも体型が違う方がいるのと同じで足長が同じでも、足の幅や厚みは人によって大きく違います。
ワイズが合っていない靴はぴったりの足長を選んでも、必ずどこかで違和感が出ます。きつい、緩い、横が痛い、甲が当たる──ほとんどの「合わない感」はワイズの不一致から来ています。
軸③|ラスト(木型)の形
ここがいちばん見落とされがちで、いちばん重要な軸です。
ラストとは、靴を作るときの「型」です。靴メーカーやブランドごとに、それぞれ独自のラストを持っています。
同じ25.0cmでも、ラストが違えば、まったく別の履き心地になります。つま先が細長いラスト、丸みのあるラスト、土踏まずが深いラスト、甲が浅いラスト──。
「リーガルの25.0cmは合うけど、ジョンロブの25.0cmは合わない」というのはサイズが違うのではなく、ラストが違うからです。
職人の知恵袋💡
お客様によく言うのですが、「25.0cm」という数字は革靴選びにおいては「身長170cm」と言っているくらいの情報量しかありません。同じ身長でも体型がまったく違うのと同じです。
3軸をまずは記録してみる
ご自身のサイズを正確に知りたい方は信頼できる靴店で測ってもらうのがいちばん確実です。私たちの工房でも、ご予約いただいた際にはまず採寸させていただいております。
ご自宅でおおよそを測りたい場合は、以下の手順で。
- 立った状態で紙の上に足を置く
- かかとからいちばん長い指の先までを直線で測る(足長)
- 親指の付け根から小指の付け根まで紙に印を打ち、足の幅を測る(足幅)
- メジャーで親指の付け根から小指の付け根を足の上を通してぐるっと一周測る(足囲=ワイズ)
ただし、自宅採寸はあくまで目安です。荷重がかかった状態と座った状態では足の形が変わりますし、左右差も含めて正確に把握するには専門の道具が必要になります。
スニーカー感覚で革靴を選んではいけない理由

ここまで読んでいただいた方なら、なんとなく察していらっしゃるかもしれません。
革靴とスニーカーは、サイズの考え方そのものがまったく違います。
スニーカーは「クッションで吸収する」靴
スニーカーはソールの素材自体が柔らかく、足の形に対する許容範囲が広い構造になっています。少しサイズが合わなくても、クッションが歪んで足を受け止めてくれる。
だから、スニーカーは「迷ったら大きめ」と言われるのです。
革靴は「足の形と一致させる」靴
革靴はまったく別の発想で作られています。
革は最初は硬いものの、履き続けるうちに足の形に馴染んでいきます。つまり、革靴は「足の形と靴の形が、時間をかけて一致していく」前提で設計されているのです。
ですから、最初から大きめのサイズを選ぶと革は伸びるものですから、履けば履くほど緩くなり、最終的にぶかぶかになります。逆に、最初から小さすぎると革が伸びても限界があり、ずっと痛い靴になってしまいます。
革靴は「ぴったり」で選ぶ
結論として、革靴は「履いた瞬間、わずかに窮屈に感じるくらい」が、正しいサイズの目安です。
これは「ぴったりすぎる」ということではありません。革が馴染むぶん「最初は少しタイトで」がちょうどいい、という意味です。
職人の知恵袋💡
スニーカーの感覚で革靴を選ぶ方が、いちばん多い失敗パターンです。「ぴったりだと痛そう」と思って0.5cm大きめを選んだ結果、3ヶ月後にはダボダボになってしまう。私たちが日常的に目にする光景です。
失敗しない革靴サイズ選びの、6つのチェックポイント

では、実際の店頭でどう試着すればよいか。具体的なチェックポイントを6つにまとめます。
チェック①|午後に試着する
足は一日のうちで少しずつむくみます。朝測ったサイズと夕方測ったサイズでは、5mm以上違うことも珍しくありません。
毎日履く革靴を選ぶなら、一日の中で足がいちばん大きくなる午後〜夕方に試着するのが理想です。
チェック②|必ず両足を履く
先ほどお伝えしたとおり、左右の足は違います。必ず両足を履いて、両足とも違和感がないかを確認してください。
チェック③|立った状態で、つま先に5〜10mmの余裕があるか
革靴は座った状態だとサイズ感が分かりません。必ず立った状態で、つま先と靴の先端の間に「捨て寸(すてすん)」と呼ばれる余裕があるかを確認します。
目安は5〜10mm。指1本が縦に入る程度の余裕があれば、歩いたときにつま先が当たりません。
チェック④|かかとが浮かないか
ゆっくり歩いてみて、かかとがパカパカ浮かないかを確認します。
かかとが浮く靴はサイズが大きいか、ラストが合っていないかのどちらかです。歩くたびに摩擦が起きて、靴擦れの原因になります。
チェック⑤|甲がきつすぎないか/緩すぎないか
革靴の紐をしっかり結んだ状態で、甲の部分に違和感がないかを確認します。
革靴の甲は紐できつめに締めることでフィットさせる構造です。ですから、紐を最大限締めても緩いと感じる場合はワイズが合っていない可能性が高い。逆に、軽く結んだだけで圧迫感がある場合は甲が浅いラストを選ぶ必要があります。
チェック⑥|小指と親指の付け根が、靴の中で「曲がる位置」と一致するか
これは少し上級者向けのチェックですが、もっとも重要なポイントです。
歩くとき、足の指の付け根が曲がります。このとき、靴のソールも同じ位置で曲がる必要があります。靴の曲がる位置と足の指の付け根の位置がずれていると、歩くたびに足が押されて、長時間履けません。
実際に何歩か歩いて、靴と足が「同じリズム」で曲がっているかを確認してください。
それでも合わないとき、最後の選択肢があります

ここまで読んでいただいて、こう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
「6つのチェックポイントを全部クリアする既製靴なんて、自分には見つからない気がする」
もしそうお感じになったとしたら──それは、あなたの足が悪いのではありません。あなたの足は、既製靴の標準的なラストの範囲から、少し外れているだけです。
既製靴は「平均」をベースに作られている
既製の革靴はメーカーが想定する「平均的な日本人の足型」をベースに作られています。
ところが、平均から少しでも外れた足の方は──たとえば左右差が大きい、ワイズが極端に広い、土踏まずが深い、外反母趾がある──既製靴の中に「ぴったり」を見つけるのが極めて難しくなります。
オーダーという、もうひとつの世界
そういう方々のために、オーダー靴という選択肢があります。
オーダー靴はあなたの足を基準に靴の形を決めます。既製靴とは発想が逆なのです。
私たちの工房では、以下のような方々が長くオーダー靴を続けてくださっています。
- 左右で1cm以上、足長が違う方
- 幅が極端に広い(EEEE以上)の方
- 外反母趾、内反小趾などのトラブルを抱える方
- 既製靴で何足も失敗してきて、もう諦めかけていた方
オーダーには種類があり、価格も幅広いコースをご用意しています。詳しくは、こちらの記事をご覧いただければと思います。 「いつかは、自分の足に合った革靴をオーダーで作ってみたい」
そう思ったことのある方は、決して少数派ではありません。けれど一歩踏み込もうとすると、ビスポーク、フルオーダー、パターンオーダー、セミオーダー──聞き慣れない言葉が並び、何から考えればいいのか分からなくなる方が多いのではないでしょうか。
革靴オーダーメイド完全ガイド|ビスポーク・セミオーダーの違いと、後悔しない選び方を職人が解説
まとめ|サイズが合わない、は欠点ではない
最後にお伝えしたいことがあります。
「自分の足は、革靴選びが難しい」というのは決して欠点ではありません。それは、ご自身の足を正しく理解する機会を持っているということでもあります。
革靴のサイズはひとつの数字では決まりません。足長・ワイズ・ラスト、そして左右差。これらすべてを丁寧に見極めることで、初めて「ぴったり」と言える一足に出会えます。
この記事のポイント
- ほとんどの人に「左右差」があるという事実
- 革靴のサイズは「足長・ワイズ・ラスト」の3軸で決まる
- 革靴はスニーカーと違い、「ぴったり」で選ぶのが正解
- 試着では立った状態・両足・歩行確認の3点が必須
- 既製で合わない場合、オーダーという選択肢がある
あなたの足にぴったりの一足を、麻布の工房でお待ちしています。