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革靴を初めて手に入れた日、ふと気付くことがあります。
この靴、どうやって手入れすればいいんだろう
インターネットで検索するとたくさんの情報が出てきます。
けれど、どれも少しずつ言うことが違ったり、専門用語が多かったり、結局何をすればいいのか分からなくなる──そういう経験のある方も多いのではないでしょうか。

本記事では革靴を毎日磨いている職人の視点から、靴磨きの正しい手順を5ステップでお伝えします。難しい話は省き、ご自宅で誰でも実践できる形に整理しました。
この内容をご参考にやっていただければ初めての方でも、革靴の輝きを引き出せるはずです。

この記事でわかること
  • 靴磨きの全5ステップが迷わず実践できる

  • 各ステップで職人が大切にしているコツ
  • 初心者がやりがちな失敗の回避法
  • 頻度の目安と続けるコツ

その前に──靴磨きは「準備が9割」

作業場
具体的な手順をご紹介する前に、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
靴磨きは実は「磨く」こと自体よりも、「磨く前と後」のほうが重要です。

作業に集中できる環境を作る

靴磨きの所要時間は慣れれば1足あたり30〜40分。慣れないうちはもう少しかかります。この時間、しっかり集中して取り組むことで靴磨きの質は大きく変わります。
以下の準備をしてから始めることをおすすめします。

  • 汚れてもいい場所(新聞紙や古布を敷いた机)を用意する
  • 換気のできる場所を選ぶ(クリームの匂いがこもらないように)
  • 道具を全て手元に揃えておく
  • 時間的に余裕のあるタイミングを選ぶ

職人の知恵袋💡

私たちが工房で日常的にお客様の靴を磨くとき、まず作業台を整え、道具を並べる時間があります。これは作業の準備というより、靴と向き合う心の準備でもありです。

揃えておきたい、6つの道具

靴磨きの道具
最初に揃えたい道具はたった6つです。

①|馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)

毛が柔らかく、革を傷つけずに表面のホコリを払えます。靴磨きの最初の工程でも使い、もっとも頻繁に手に取るブラシです。

②|豚毛ブラシ(クリーム馴染ませ用)

毛が硬く、コシがあります。クリームを革に馴染ませ、艶を引き出す下拵えとして使います。
色違いの靴にはそれぞれ専用の豚毛ブラシを用意するのが理想です。黒い靴に使ったブラシを茶色の靴に使うと、色が移ることがあります。

③|靴クリーナー(汚れ落とし)

革の表面に染み込んだ古いクリームや汚れを落とすための、専用の洗浄剤です。「リムーバー」「ステインリムーバー」とも呼ばれます。

④|靴クリーム(栄養・色補給)

革に油分と水分を補給する、靴磨きの主役です。色付きと無色(ニュートラル)があり、革の色に合わせて選びます。
初心者の方はまず無色から始めるのが安全です。

⑤|ネル布または柔らかい布

クリーナーやクリームを塗り、ブラッシングをした後に最後の乾拭きで使います。柔らかい布なら何でも構いませんが「ネル生地」が伝統的に推奨されています。
古いTシャツを切ったものでも十分代用できます。

⑥|シューキーパー(シューツリー)

靴の形を保ち、内部の湿気を取る革靴の必需品です。靴磨きの際にもシューキーパーを入れることで革のシワが伸び、磨きやすくなります。
木製、特にシダー材のものが香りも吸湿性も優れています。


これら6つを揃えれば、約1万円前後の初期投資になります。一度揃えれば数年は使えるため、革靴を長く保ちたい方には必要な投資とお考えください。

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「大切な革靴を、長くきれいに履き続けたい」 「でも何から揃えればいいか分からない…」多くの方が、そう思われるようです。 いざ靴磨き用品を探してみると、ブラシやクリームの種類がたくさんあって、どれが本当に必要なのか迷ってしまいますよね。下手に道具を買って、大事な靴を傷つけてしまったらどうしよう…と、

 靴磨きの5ステップ|30〜40分の所作

靴磨き
いよいよ、具体的な手順です。5つのステップに分けて順番に進めます。

ステップ①|準備(5分)

まず、靴紐を外します。靴紐があるとベロ(タン)の下や紐の通る穴の周りを磨くことができないため最初に取り除きます。(ただし、毎回外さなくても良いかとは思います)

次にシューキーパーを入れます。シワが伸びた状態にすることで、革の表面全体を均一に磨けますし、ブラッシングの際にシワの凹にはまったホコリを取り除くことができます。

ステップ②|ブラッシング(5分)

馬毛ブラシで靴全体のホコリを落とします。
ポイントは力を入れすぎないこと。表面を「払う」ように軽くブラシを動かします。コバ(ソールの側面)、ヒール部分、靴底と本体の隙間まで丁寧に。
特に革と靴底の境目には細かいホコリが溜まりやすい場所です。歯ブラシでも代用できます。

ステップ③|汚れ落とし(5分)

ネル布または柔らかい布の小さく折りたたんだ部分に、クリーナーを少量取ります。
布全体に薄く広がるくらいの量で十分。多量に塗ると革の表面に必要な油分まで取り除いてしまいます。

革の表面を円を描くように優しく拭いていきます。古いクリームと表面の汚れが布に移ってくるのが分かるはずです。
「布が黒くなる」ことが初心者にとっては少し驚きですが、これが正常な反応です。

ステップ④|クリーム塗布(10分)

クリームを別の布の先に、10円玉くらいの量取ります
革の表面に薄く塗り広げます。一気に厚く塗らず、何度かに分けて薄く均一に。革全体にクリームが行き渡ったら5分ほど時間を置きます。革にクリームを馴染ませる時間です。

※この他にもペネトレイトブラシというクリーム塗布専用のブラシもあります。
クリームを全体にムラなく塗布でき、手も汚れないので靴愛好家には重宝されております。


🛒 クリーム塗布専用のブラシペネトレイトブラシはスピカECサイトでも販売しております。
M.MOWBRAY(M.モゥブレィ)ペネトレイトブラシ

ステップ⑤|仕上げのブラッシングと乾拭き(10分)

豚毛ブラシで革全体をブラッシングします。豚毛は馬毛より硬く、革にクリームを馴染ませながら余分なクリームを除去する役割があります。
ブラッシングは革の繊維に沿って、リズミカルに。

最後に何もついていない柔らかい布で軽く乾拭きます。革本来の艶がしっとりと現れます。

これで靴磨きの基本工程は完了です。靴紐を戻し、シューキーパーを抜けば磨かれた一足の出来上がりです。

ステップごとに職人がいちばん気をつけていること

革靴の爪先
基本の5ステップはシンプルです。けれど、職人と初心者の靴磨きには確かな差があります。その差は各ステップの「細かい所作」に宿っています。

ブラッシングのコツ|「擦る」のではなく「革の表面を払う」

馬毛ブラシでホコリを落とすとき、初心者の方は「ブラシで擦る」イメージで力を入れがちです。
実は効果的なのは「ブラシで革の表面を払う」ような感覚です。革の繊維の隙間に入り込んだ細かなホコリは力を入れなくても、表面を払う感覚で十分取れます。

クリーナーの量は「指で触って湿る程度」

クリーナーは「少なすぎる?」と感じるくらいが適量です。
布にクリーナーを染み込ませたとき、指で触って「少し湿る」程度。これ以上だと革の油分まで奪ってしまいます(結果的に革がカサカサになるおそれも)。

クリームは「足りないかな」と感じるくらいで止める

クリーム塗布で初心者がいちばん犯す失敗は「塗りすぎ」です。
革に塗ったときに「もう少し足したい」と感じるくらいで、ぐっと止めてください。革に必要な量は思っているよりずっと少ない。塗りすぎたクリームは革の通気性を奪い、カビの原因にもなります。

豚毛ブラシは「リズム」が命

豚毛ブラシで艶を出す工程は靴磨きで最も技術が出る部分です。
コツは軽く、リズミカルに、同じ箇所を何度も。ブラッシングを止めずに約3〜5分連続で動かすことで革本来の艶がじわじわと現れてきます。
ここで急いで終わらせると、艶の出方が中途半端になります。リラックスして流れる音楽のような所作で。

職人の知恵袋💡

靴磨きは料理に似ています。レシピは同じでも、手の動かし方時間のかけ方で、まったく違う仕上がりになります。最初は時間がかかっても繰り返すうちに、自分なりの「リズム」が見つかります。

やりがちな失敗とその対処法

靴の手入れ
初心者の方がやりがちな失敗
をいくつか挙げておきます。事前に知っておけば、避けやすくなります。

失敗①|クリームを塗りすぎる

もっとも多い失敗です。革がベタついたり、表面にクリームの白い跡が残ったりします。

対処法💡

余分なクリームを豚毛ブラシでしっかり払い、布で乾拭きします。ひどい場合はもう一度クリーナーで全体をリセット。

失敗②|濡れた靴を磨いてしまう

雨に濡れた靴を誤った対処を行い、半乾きの状態などで磨こうとすると、革の内部に水分が残ったままクリームを塗ることになり革を傷めます

対処法💡

濡れた靴は必ず完全に乾かしてから磨きます。乾燥には最低2日かかります。
※ただし、乾燥に2日もかけてしまうとカビの原因にもなるので注意。

失敗③|色違いの靴に同じブラシを使う

黒い靴に使ったブラシをそのまま茶色の靴に使うと黒い色素が移ってしまいます

対処法💡

色ごとにブラシを分ける。最低でも、黒用と茶色用の2セットを揃えるのが理想です。

失敗④|力を入れすぎる

汚れを落とそうとして強くこすってしまうと、革の表面を傷つけたり、色が抜けたりします。

対処法💡

靴磨きは力ではなく、「優しさと時間で仕上げるもの」と覚えてください。

失敗⑤|特殊な革に普通のクリームを使う

スエード、ヌバック、コードバン、ブライドルレザーなどの特殊な革は、それぞれ専用のケア方法が必要です。普通の革靴用クリームを使うとシミになったり、革質が変わったりします。

対処法💡

靴を購入するときにどんな革か必ず確認し、それに合ったケア用品を揃えます。

どのくらいの頻度で磨くべきか

輝く革靴
「毎日磨くべきですか?」とよく聞かれます。結論からお伝えすると毎日のフルコースは不要です

毎日の習慣(30秒)

毎日やってほしいのは馬毛ブラシで全体のホコリを落とすこと。所要時間は30秒
このひと手間で革に付着するホコリと、革の乾燥を引き起こす微細な汚れを取り除けます。これだけで革靴の寿命は大きく変わります。

月1回の本格ケア(30〜40分)

ステップ①〜⑤のフルコースは1ヶ月半〜2ヶ月に1回程度で十分です。
「革の表面が、なんだかカサついてきた」「以前のような艶がない」と感じたら、それが本格ケアのタイミングです。

ローテーションの大切さ

毎日同じ革靴を履くと革に休む時間がなく、湿気が溜まり、傷みが早くなります。
最低でも1週間を2〜3足の靴でローテーションすること。それぞれの靴に休息を与えながら使うことで各靴の寿命が大幅に伸びます。

まとめ|磨くことは靴と向き合う時間

靴磨きという行為は革靴という道具のメンテナンスである以上に、自分自身の所作を整える時間でもあります。
週末の少しの時間を割いて、靴と向き合う。靴が少しづつ育っていくのを感じる。1週間の始まりに自分の磨いた靴を履く。
こういう時間が日常に静かな満足をもたらします。

この記事のポイント

  • 靴磨きの基本道具は6つ。一度揃えれば数年使える
  • 5ステップ(準備・ブラッシング・汚れ落とし・クリーム・仕上げ)
  • クリームは「足りないかな」と感じるくらいが適量
  • 毎日30秒のブラッシング+月1回の本格ケアで十分
  • ローテーションが、革靴の寿命を伸ばす最大のコツ

その手で磨き上げた輝きが、明日からのあなたに、確かな自信をくれるはずです。